続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 8-12



オープンパーティ当日。


子供達や園子ちゃんは毛利さんの借りたレンタカーで会場に向かうらしく、私達とは現地での合流することなっていた。



零くんとの約束の時間になり、マンションの下に降りると見慣れた白い車が停まっていた。


「お待たせしました」
「さっき着いたとこだよ」


エントランスから出てくる私の姿を見つけると、中から車の扉を開けてくれる。


何度か見た事のある仕事用のグレーのスーツではなくて、少し細身な深い紺色のオシャレなスーツ姿の彼。


「かっこいい・・・」

思わずそんな言葉がこぼれた。


「ありがと。なまえの服と揃えたみたいに見えるな、これ」

セットしてある髪を崩さないように、ぽんっと軽くだけ私の頭を撫でる。


今日のために卸した買ったばかりの紺色のワンピース。彼のスーツより少し明るいがよく似た色合いだ。


たまたまとはいえ少しだけ照れる。


「・・・・・・今からでも行くのやめたりしないよな?」

そんなことを考えている私とは正反対に、零くんは真剣な顔で私を見る。


「ちゃんと大人しくしておくからお願い」
「聞かないのは分かってた。諦め悪いな、俺も」


上目遣いで彼を見上げた私を見て、少しだけ困ったように笑う彼。その表情はダメもとで先程の言葉を言ったことを伝えていた。


「勝手な行動は絶対にするな。あと何かあったら俺の言うことを聞いて欲しい」
「うん、わかった」
「ん、いい子。じゃあ行くか」


車のキーを回すとエンジンが音を立てた。





「なまえお姉さーん!」

ツインタワービルに着き車から降りると、子供達が手を振りながら迎えてくれる。

彼らに手を振り返しながら近付く。


「なまえさんのそのワンピース可愛い!」

子供達に向けていた視線。その後ろから聞こえてきた園子ちゃんの声。それに反応して振り返る。


「園子ちゃん?!その髪型!」

「イメチェン!大人っぽくていい感じじゃないですか?」

いつもストレートだった彼女。けれど目の前にいる彼女の髪は綺麗にウェーブがかかっていた。


それはまるで・・・・・・、


思わず子供達の隣にいた哀ちゃんに視線がいく。


「そうなの、彼女にならってやってみたんです」

私の視線に気付いた園子ちゃんが哀ちゃんを見て笑う。


とても似合ってるし可愛いと思う。


けれど今の園子ちゃんの姿がどこか哀ちゃんの元の姿に重なって見えて、嫌な予感が胸を巣食う。



「可愛いと思う。似合ってるよ」

そんな不安に蓋をするように、私は園子ちゃんに笑顔を向けた。




「大丈夫か?」

園子ちゃんが満足気に笑いながら蘭ちゃんの隣に戻ったのを見た後、零くんが私の顔を覗き込みながら尋ねてきた。


そんなに顔に出ていたんだろうか。


「うん、大丈夫。ちょっとだけ嫌な予感がしたっていうか・・・」
「嫌な予感?」


うまくこの不安を言葉にできない私。
零くんは急かすことはせず、黙って私の次の言葉を待ってくれる。


「今日の園子ちゃん、髪型とかがシェリーに似てる気がしただけなの」
「彼女は組織とは関係ないだろ?」
「あ、うん、それは分かってるの。ただシェリーを探しに来た組織の人が彼女と見間違えて何かに巻き込まれるとか・・・」
「さすがにそれはないだろ。彼女とシェリーでは雰囲気が違いすぎる。なまえの考えすぎだよ」


零くんはふっと口元を緩めて笑った。


考えすぎならそれでいい。


「・・・・・・うん、そうだよね。ありがとう、心配してくれて」
「なまえが笑ってないと子供達が心配するぞ」

優しく笑ってくれる零くん。

彼の隣にいると先程までの不安が少しだけ和らいだ。

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