▽ 6-8
Another side
すーすーと肩越しに寝息が聞こえてくる。
「・・・・・・寝たか」
泣きつかれたのだろう。意識を手放したなまえを抱え、ベットに運ぶ。
頬に涙のあとを残したまま眠る彼女を一瞥すると、そっと部屋の扉をしめる。
雨の中で立ち尽くすなまえを見たときは、自分でもらしくないくらい焦った。
ボウヤが一緒にいることも一瞬忘れ、走り出していた自分がいた。
「らしくないな・・・・・・」
そうつぶやきながら煙草に火をつける。
なまえがあんな風に泣くのは、最初に会ったとき以来だった。
無理をして笑うところ。
安室くんと関わるときに、異常なまでに俺に遠慮するところ。
今日の話を聞いて、すべて繋がった気がした。
無理をして笑うのは、昔からの癖なんだろう。
安室くんと関わることで、俺がどう思うかやどういう影響がでるか。自分のせいで誰かに迷惑をかけることを人一倍嫌がり、常に周りにとっての最善を考える。
ふとなまえが安室くんに会ったとき、彼の姿を見てなんとも言えない気持ちになると言っていたことを思い出す。
似ているからだろうな・・・・・・。
安室 透として笑顔を作る彼と、周りの望むみょうじ なまえを演じてきた自分の姿が・・・・・・。
「まぁそれだけではないんだろうがな・・・・・・・」
そんな俺のつぶやきは、誰にも届くことはなく夜の闇へと吸い込まれていった。
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