▽ 5-4
Another side
「────・・・だと思いませんか?」
隣に座る梓さんの声にハッとする。
無事に買い出しも終わり、ポアロへ帰る車の中で俺は先程の出来事について考えていた。
「すいません、もう一度お願いします。運転に集中しちゃってました」
「なまえさんのことですよ!やっぱりデートだったと思いませんか?」
お似合いだと思ったのになぁ、とこぼす梓さん。
「でも本人が否定してたんでしょう?」
「そうなのよね・・・・・・。ほらなまえさんって安室さんのこと見ても、キャーってならないでしょ?だからてっきり素敵な彼氏がいるんだと思ったのに」
「その判断基準だと、梓さんも素敵な彼氏がいることになりますね」
冗談めかしてそう言えば、それとこれとは別です!と言う彼女に思わず笑みがこぼれる。
「またお店に来てくれるって言ってたし楽しみですね!」
どうやら梓さんは、なまえさんをえらく気に入っているらしい。
「ずいぶん仲良くなったんですね」
「優しくて素敵な人だったし。それに!!久しぶりにお客さんで同年代の女の子と普通に話せたんですよ?」
いつもは女性客からは、安室さんに近付くな〜って視線ばっかり浴びてますもん!と付け加えながらジト目でこちらを見ている。
「ははっ、そんな事はないと思いますけど」
「でもまぁあんなイケメンと仲良しなら、安室さんを見て騒がないのも納得です」
やっぱりお似合いだったなぁ、と言いながら携帯を触りはじめる梓さん。
お似合い・・・ねぇ。
どこにでもいる女性のはずなのに、どこか引っ掛かりを覚えるみょうじ なまえという女性。
梓さんとなまえさんが親しくなったのなら、彼女はポアロにまたやってくるだろう。
少し近づいてみるか、そんなことを考えながらポアロへ向かって車を進めるのだった。
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