▽ 5-2
「あれ、なまえさん?」
私に気付いた安室さんがこちらにやってくる。
「それにあなたは・・・・・・沖矢 昴さんでしたよね?」
僕のこと覚えていますか?と昴さんに視線を向ける。
「あぁ、あの時の宅配便の方ですよね」
少し考える素振りを見せたあと、昴さんが答える。
・・・・・・宅配便?
あ、そうだ。確かそんなこと言ってたな・・・・・・。
「・・・あぁ、そうでしたね。あのときは長々とお付き合い頂き、ありがとうございました」
一瞬ぽかんとした安室さんだったけれど、すぐにいつもの調子に戻る。
「安室さんも一緒だったんですね。ポアロの買い出しですか?」
2人のそんな会話をを遮るように、問いかける。
「ええ、そうなんですよ。さすがにこの量を梓さん1人に任せるわけにはいきませんし。
ところで、なまえさんと沖矢さんはお知り合いだったんですね!おふたりも買い物ですか?」
表情こそ笑顔を作っているものの、探りを入れられている感が否めなくて居心地が悪い。
安室さんばかりに気を取られていると、梓さんが私の方を見ながら手招きしていることに気付く。
昴さんの隣を離れ、梓さんのそばに行く。
「もしかしてデートとかですか?お邪魔しちゃいましたか・・・?」
空気読まずに声かけちゃってごめんなさい、と私に謝る梓さん。
「デートなんかじゃないですよ!昴さんにはいつもお世話になってるので、そのお礼に買い物に付き合っていただけです」
「そうなんですか、お似合いだと思ったのに〜」
慌てて否定すると、どこか残念そうな梓さん。やっぱりどこでも女の人は恋愛話が好きなんだなぁとしみじみ思う。
「私には昴さんみたいな素敵な方は、もったいないですよ」
「そんなことないですよ!本当にお似合いだと思いましたもん!」
この世界に来てから昴さんや店長以外と関わっていないこともあって、こんな風に同年代の女の子と話すのは久しぶりだ。
久しぶりのガールズトークに熱中してしまい、思わず話が長くなってしまう。
ふと昴さん達の方を見ると、彼らもなにやら談笑中のようだ。
昴さんすごいな・・・・・・、普通に話してる・・・。
「こんな風になまえさんとお喋りできてよかったです」
ポアロのお客さんって男性が多いし、最近は安室さん狙いの女子高生ばかりで・・・・・・。こんな風に同年代で、お喋りできる方と会うのは久しぶりです!と梓さんは人懐っこい笑顔を向けてくれた。
ポアロに男性客が多い原因のひとつは、間違いなく梓さんのこの笑顔に違いない。
彼女の笑顔を見ながらそう思ったのだった。
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