▽ 4-7
「じゃあ僕は彼女を送ってきますね」
子供達と梓さんにそう言う安室さん。
「お姉さん大丈夫?」
包帯の巻かれた私の腕を見て心配そうにしている子供達。
「大丈夫だよ。でも危ないから次からはお店の中は走っちゃダメだよ?」
子供達の前にかがみ、目線を合わせながらそう言うと、はーい!と素直な返事が返ってくる。
「じゃあ梓さん、ケーキは冷蔵庫に入っているのでお願いしますね」
梓さんにそう言うと、安室さんは車をまわしてきますと外へ向かう。
「あの、本当にすいませんでした」
私に向かって頭を下げる梓さん。
「本当に大丈夫ですから、気にしないでください。今度また紅茶を飲みに来ますね」
笑顔でそう言うと、やっと梓さんの表情も和らいで、お待ちしてますと返してくれる。
子供達と梓さんに見送られながら、ポアロから出る。
ああ、やばい。分かっていたけれど、これはやばい。
目の前には白のRX-7。
どうぞ、と助手席を開けてくれる安室さん。
これにときめかない人っているのかな・・・。
平常心、平常心と自分に言い聞かせながら助手席に乗り込む。
「そういえば自己紹介がまだでしたね、僕はあの店でバイトをしている安室 透と言います。お名前を伺ってもいいですか?」
他愛もない話をしていると、ふと思い出したように言う安室さん。
もちろん存じております、なんてそんなことを言えるわけはない。
「あ、ほんとですね。私はみょうじ なまえです。私も家の近くの喫茶店で働いているんです」
「なまえさんも喫茶店で働かれているんですか?奇遇ですね」
「ええ、最近お客さん達からポアロの話をよく聞くので気になってお邪魔させてもらったんですよ」
噂通り素敵なお店ですね、と付け加える。
「ありがとうございます。同業者の方に褒めてもらえるのは嬉しいです」
そう言いながら、こっちに向いて微笑むのはやめて欲しい・・・・・・心臓に悪すぎる・・・・・・。
憧れ続けた人の助手席に座っているだけでも頭がパニック寸前なのに、そんなキラキラした笑顔を向けられるとどうにかなりそうだ。
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