▽ 4-6
Another side
まただ。あの時と同じ目だ。
淹れたての紅茶をかぶった彼女の腕は、すぐに冷やしたとはいえ赤くなっていた。
「やっぱり少し赤くなってますね・・・・・・。痛みが酷くなるようなら病院に行かれた方が・・・・・・。女性ですし跡が残ってはいけないので」
そう言いながら顔を上げると、あの時と同じ目で俺を見る彼女がいた。
なんなんだ、いったい・・・・・・。
さっきまでは普通だったはず。この前だってそうだ。何がきっかけでそんな目をするのかが分からない。
「・・・・・・大丈夫ですか?」
そう尋ねると、ハッとしたようにもう大丈夫だと答える彼女。
今日の一件を見ても、彼女は黒い人間ではないのだろう。
見ず知らずの子供を庇い、自分の怪我より周りの心配をする。
その姿が演技にはとても見えなかった。
優しい人だと言った言葉に嘘はない。よくある言葉を使うなら、彼女は善人なのだろう。
ただあの瞳だけは好きになれなかった。言葉で言い表せない居心地の悪さを感じる。
最初にこの店で彼女を見た時は、沖矢昴についてもっと知ることができるかもしれない、どうにか上手く近づければ・・・・・・と考えた自分がいた。
でも今はそれよりもどうしてあんな目で俺を見るのか。そればかりが頭に残っていたのだった。
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