▽ 4-5
しばらく冷やしていると、痛みは少し和らいできた。
「ちょっと失礼しても大丈夫ですか?」
そう言いながら私の服の袖をまくる安室さん。
待って、無理無理、近い。目の前に座っているこの状況ですら緊張するのに、触れられたらもうドキドキしすぎておかしくなりそう。
そんな心の内を必死に隠しながら、じっと耐える。
「やっぱり少し赤くなってますね・・・・・・。痛みが酷くなるようなら病院に行かれた方が・・・・・・。女性ですし跡が残ってはいけないので」
心配そうな表情で私を見る安室さん。
その瞳からは、本当に心配してくれていることが伝わってくる。
他人の傷はここまで心配してくれるのに、どうして自分の体のことになるとこの人は無茶をするんだろう・・・・・・。
今まで見てきた怪我をした彼の姿を思い出す。
「・・・・・・大丈夫ですか?」
いけない、また余計なことを考えてしまっていた。
「・・・ッ、すいません、少しぼーっとしちゃってました。本当にもう大丈夫ですから心配しないで下さい。あ!さっきの店員さんや子供達にも心配ないと伝えてください」
安室さんに手当てをしてもらっている間に、何度か様子を見にきた梓さんはこちらが申し訳なくなるくらいに謝ってくれた。
子供達もせっかくケーキを楽しみにしてたはずなのに、悪いことをしてしまったな・・・。
「優しい人ですね、あなたは」
「え?」
「見ず知らずの子供を庇って、自分が怪我をしても周りの心配ばかりしている」
腕に包帯を巻きながらそう言う安室さん。
「優しいことはいい事ですが、あまり無茶をしてはいけませんよ」
あなたがそれを言うか・・・・・。心の中でツッコミを入れながらも、善処します。と答える。
「はい、できました。さすがに足は僕が手当てする訳にはいかないので、すいません」
包帯を巻き終え救急箱を片付ける安室さん。
たしかに腕でも恥ずかしいのに、足なんて見られたら今度こそ死んでしまう気がする・・・・・・。
「服も汚れてしまっていますね・・・。その格好では外を歩くのもあれですし、今日は僕が車で送りますよ」
ん?今なんて言った?
送る??
「いえ!それは申し訳ないので大丈夫です!それにお仕事中ですし!」
「梓さんにも頼まれているので大丈夫ですよ、それに今日はもうバイトも終わりますし」
ニッコリと笑顔でそう言われてしまうと何も言い返せなくなる。
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