▽ 4-4
「梓さん?大きな音がしましたが、何かありましたか?」
先程の音を聞いた安室さんが、キッチンからでてくる。
割れたカップに、おろおろとしている梓さんと子供達、それに床に座り込む私。
状況を把握した安室さんが私の前に座り込む。
「大丈夫ですか?紅茶がかかったのは腕だけですか?」
「・・・あ、はい」
「みんなは怪我はしてないかい?大丈夫なら危ないから席に座って待っていてくれるかな?梓さんは、ここの片付けをお願いします」
テキパキと指示を出していく安室さん。
あなたはこちらに来てください、と腕を引かれながらキッチンに連れていかれる。
「服の上からでいいので、しばらく冷やしてください」
言われた通りに腕に流水を当てる。
あぁ、冷たくて気持ちいい。自分が思っていたより思いっきり被ったのかもしれない。
「お客様に怪我をさせてしまうなんて、申し訳ありません」
申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げる安室さん。
「いえ、私が勝手に動いちゃっただけなので!それに怪我といっても大したことないですし!」
本当になにやってんの私・・・・・・。必要以上に関わらないって決めてここに来たのに、キッチンに安室さんと2人というこの状況はどう考えても必要以上ってやつだ。
まぁでも元太くんが怪我するよりはマシか。
「これも使ってください」
そう言いながら安室さんが持ってきてくれたのはタオルに包まれた保冷剤。
「足にもかかっていたでしょう?」
バレてたか・・・・・・。大事にしたくなくて黙っていたけど、彼には見抜かれていたらしい。
さすがにここにシャワーはないので保冷剤ですいません。と付け加える安室さん。
「ありがとうございます」
お礼を言いながら安室さんの顔を見る。
「・・・・・・あれ?あなたは・・・」
あ、やっぱり気付かれた。
「あぁ!この前助けて頂いた方ですよね?ここで働かれていたんですね」
少しわざとらしかったかな・・・そう思いながらも驚いたふりをする。
「やはりあなたでしたか。あれから大丈夫でしたか?」
「はい、すぐに連れが来たので大丈夫でした」
「・・・・・・連れ・・・ね」
「え?」
「いえ、何でもありませんよ。無事に連れの方と合流できたならよかったです」
ニッコリと笑う安室さん。さっきなんて言ったんだろ・・・・・・。一瞬だけ彼の雰囲気が変わったような気がする・・・・・・気のせいかな・・・。
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