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▽ 4-3



翌日になり、よし!自然体でいこう。と自分に言い聞かせて家を出る。


店長の押しの強さと、昴さんの優しさに負けた私はポアロに向けて足を進めていた。


天気もいいし、いい散歩になるな。そんなことを考えながら歩いていくと〈ポアロ〉の看板が目に入る。

ついに来てしまった・・・・・・。
いや、もしかしたら今日は安室さんが休みかもしれない。

休みだったら残念に思う気持ちはあるけど、やっぱり会うのはなにかボロを出してしまいそうで怖い。そんな相反する気持ちを抱えながらポアロの前に立つ。


ええい!ここまできたら成るように成る!

扉を開けると、そこにはアニメや漫画で見た景色が広がっている。


「いらっしゃいませ〜!」

奥から可愛らしい女性が笑顔でこちらに向かってくる。


本物の梓さんだ・・・・・・めちゃくちゃ可愛い・・・・・・!!!実物の方が可愛いとかずるすぎる。


「1人なんですけど大丈夫ですか?」

梓さんの可愛さにときめきながらも、必死にそれを隠して答える。


「もちろんですよ、こちらへどうぞ!」

そう言いながらカウンター席に案内される。席につき、紅茶のセットを注文する。


少々お待ちくださいね、と言いながら去っていく梓さんの後ろ姿が見えなくなったのを確認してから、店内を見回す。

平日という事もあり、そこまで混みあっていない店内に安室さんの姿はない。


今日は休みなのかな?

残念な気持ちはあるけど、少しホッとしたかも。


カランコロンッ

そんなことを考えながら持ってきた小説を読んでいると、入口の扉が開く音がする。


「ただいま戻りました〜」
「「「こんにちはー!!」」」


ものすごく聞き覚えのある声だ・・・。

入口に目を向けるとそこには、買い物袋を持つ安室さんと少年探偵団の3人が仲良くお店に入ってくるところだった。

どうやら安室さんは休みではなく、買出しに出かけてただけのようだ。タイミングがいいのか悪いのか、少年探偵団の子達とまで遭遇するとは思ってなかった。


やっぱりファンとして、テンションが上がらないわけがない展開に思わず視線がそちらに向いてしまう。


「あら、みんないらっしゃい!」

梓さんが紅茶を運びながら子供達に笑顔を向ける。

「今日は探偵の兄ちゃんが、新作のケーキ食わせてくれる約束なんだぜ!」
「楽しみですよね!」
「うん!この前のパフェもすごく美味しかったもん!」

嬉しそうにぱたぱたと走りながら席に向かう彼らに、思わず笑顔がこぼれる。


そういう事か。本当に安室さんってできないことってないのかな・・・、恐らく私には想像できないくらい激務のはずなのに、いつそんなの考えてるんだろ。


「お待たせしました、お先に紅茶置いておきまッ・・・!」


ガチャンッ!

私の席に紅茶を置こうとした梓さんの横を子供達が通る瞬間、元太くんが梓さんにぶつかる。


「危ない!」

カップは梓さんの手から離れ、尻もちをついた元太くんの腕に紅茶がかかりそうになる。


思わず自分の体で彼を庇う。


「大丈夫?!熱くなかった?」
「・・・・・・お、おう、大丈夫だけど、姉ちゃんの腕の方が・・・」

幸いにも元太くんには紅茶はかからなかったようでホッとする。


「大丈夫ですか?!どうしよう、申し訳ありません!」

私の横でおろおろとする梓さんに、大丈夫ですよと笑顔を向ける。

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