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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▽ 19-10



電話を切ってから、言われた通り電化製品のネット接続を切り、壊れたテレビを片付けながらふと外に視線を向ける。雨のせいで相変わらず薄暗いけれど、先程までに比べると街は少し落ち着きを取り戻していた。


片付けが終わり、しんと静まった部屋に再び携帯の着信音が鳴り響く。


また降谷さんかな?と思い画面を見ると、そこにあったのは昴さんの名前で頭に疑問符を浮かべながら通話ボタンを押す。


『今大丈夫か?』

聞こえてきたのは昴さんではなく赤井さんの声。久しぶりに聞く彼の声に、どこか緊張してしまう。


「家にいるので大丈夫ですよ」
『電化製品が次々に暴走しているだろう?怪我をしたりしていないか?』
「ポットとテレビが壊れちゃったんですけど、降谷さんから連絡を貰ってすぐ電源を切ったので今は大丈夫です」
『降谷君から連絡があったのか?』
「はい。電化製品のネット接続を切れとだけ言われてすぐ切れちゃったんですけど・・・」
『そうか』

私の言葉を聞くと、しばらく無言で何かを考え込む赤井さん。そして小さく「そういう事か」と呟くと彼は話を再開した。


『怪我がなくてよかったよ』
「赤井さんは大丈夫ですか?」
『あぁ、平気だ。今日電話したのはこの前ボウヤが話していたことについてなんだが・・・』
「毛利探偵のことですか?」
『そうだ。粗方の事情は把握したからなまえにも伝えておこうと思ってな』


結局彼が今どうなったのか、私には知る術がなかったので赤井さんのその言葉は有難いものだった。

事件の顛末をコナン君に聞くわけにもいかないし、もちろんそれは降谷さんにだって同じだ。


『彼の不起訴が決まったようだ』
「不起訴・・・ってことは、もう大丈夫ってことですよね?」
『あぁ。詳しい話は省略するが、サミット会場の爆破と今回のIoTテロの犯人は同一犯のようだ』
「IoT・・・テロ・・・?」

聞きなれない言葉に、思わず首を傾げる。


『犯人はネットにアクセスできる電化製品を無差別に暴走させているらしい。サミット会場の爆発現場からも、IoT家電の圧力ポットが見つかっているようだ』
「・・・・・・じゃあそのIoTテロの最初が、サミット会場の爆破だったってことですか?」
『そのようだな。どうやらボウヤがそれに気付いたらしい。流石としか言い様がないな』

そう言いながら、ふっと笑みを零した赤井さん。


本当に流石としか言い様がなかった。あの小さな身体で、必死に調べたんだろう。

それにしてもどうして赤井さんがそれを知っているのだろうか・・・、と考えてみたけれどきっと彼ならば調べようと思えば手段はいくらでもあるんだろう。

それよりも今は毛利探偵の無実が証明されたことに、ほっと安堵のため息をつく。


『だから残りは、警察がIoTテロの犯人を突き止めるだけだ』
「・・・・・・はい」


どうしてだろう。胸がざわざわする。

赤井さんの言う通り、テロの原因も分かったんだ。あとは犯人さえ捕まればいいはずなのに、頭の中から嫌な予感が消えない。


『心配しなくても日本の警察は優秀だ。すぐに見つかるさ』
「そうですよね・・・。連絡をくれてありがとうございます」
『気にしなくていい。何かあったらすぐに連絡してこい』


ぷつりと切れた電話。一人ぼっちの部屋の中で、その嫌な予感が当たることのないようにただただ祈るしかなかった。

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