もし出会わなければ | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▽ 19-4



『さて、CMの後は開催迫る東京サミットの最新情報をお送りします』

昼食の片付けをしていると、連日のように放送されているニュースが今日も聞こえてくる。

いよいよサミットの開催が来週に迫っていることもあり、その報道は日々加熱していた。


それに伴って降谷さんからの連絡は、より簡潔なものになっていて、昨日なんて夜中に『寝る』の一言だけだった。それでも連絡があるだけ・・・・・、ちゃんと無事なんだと・・・、まだ私達が終わっていないんだと分かるだけで安心できるものだ。


そんな事を考えながら、紅茶を片手にテレビの前に腰をおろす。


『ご覧のとおり〈エッジ・オブ・オーシャン〉は二本の橋で繋がっています。サミットが開催される五月一日に警備を担当する警視庁は、最大で二万二千人の警察官を都内の警備に充てると発表しました。次は無人探査機〈はくちょう〉のニュースをお送りします』

テレビの映像がエッジ・オブ・オーシャンからCMへと切り替わる。


最近ニュースといえば専らサミットと無人探査機の話題で、何度あの埋立地の映像を見たかわからないくらいだ。


紅茶を口元に運びながらぼうっとテレビを見ていると、CMが終わりニュースは無人探査機の解説を始める。丁寧に解説している女性アナウンサーの話を聞きながら、現代技術の進歩に小さく感動していると、番組の途中で司会者の緊迫した声が話を遮った。


『番組の途中ですが、たった今入ったニュースです』



『お伝えします。来週、東京サミットが行われる国際会議場で、先ほど大規模な爆発がありました。そのときの防犯カメラの映像です』


映像が司会者から国際会議場の防犯カメラへと慌ただしく切り替わる。


すさまじい音と共に、国際会議場が爆発し画面は粉塵に覆われる。まるで映画のワンシーンかのようなその光景に、思わずカップを持つ手が止まる。


「・・・・・・まさか・・・ね・・・」


嫌な予感が脳裏をよぎる。

彼からの連絡は昨日の夜中が最後だった。今どこで何をしているのか、私は知らない・・・・・・。でもまさかそんなわけ・・・・・・。


震える手でカップを机に置くと、そのままテレビへと近付き食い入るように画面を見つめる。


『現場となった統合型リゾート〈エッジ・オブ・オーシャン〉はまだ開業前だったため利用客はいませんでしたが、サミット警備の下見をしていた警察官が数人死傷したとの情報が入っています』


警察官が死傷。

その言葉に手先の温度が失われていくのがわかった。


慌てて携帯を手に取ろうと机に手を伸ばすと、ちょうど映像がまた防犯カメラのものに切り替わる。

真っ白になっていた画面は粉塵が徐々に収まって、もうもうと噴き出す煙と炎が映り・・・・・・、


「・・・・・・っ!!!」


言葉が出なかった。


見間違うはずがない。

一瞬だったけれど、見慣れたグレーのスーツ。間違いなくそれは、私の頭の中を占めている彼のもので・・・・・・、


「・・・・・・嘘・・でしょ・・・・」


画面越しの映像を上手く頭で処理することが出来ない。でも確かに画面に移った彼は傷だらけで・・・・・・。一瞬で途絶えた映像かは、それ以上何も教えてくれることは無かった。

prev / next

[ back to top ]