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▽ 18-1



きっかけは些細なすれ違いだった。





クリスマスが終われば年越し、そしてバレンタインにホワイトデー。信仰の有無に関わらず、この国は本当にイベント事が多いものだ。


そんなイベント事には無関心かと思っていた降谷さんだけど、意外とそうでも無いらしい。

普通の恋人同士と同じように・・・・・、とはいかないけれど私達はそれなりに上手くやっていた。


でもそれは薄い氷の上を歩いているような不安定なもので、ほんの僅かな刺激で割れてしまうものだとこのときの私は知らなかった。





それは突然の電話だった。


土曜日の昼下がり。ソファで惰眠を貪っていた私の携帯が鳴り響く。通話ボタンを押すと、聞こえてきたのは赤井さんの声でいつもより幾分か真剣みを帯びていた。


『最近降谷君がよく家の周りを張っているんだ。問題ないとは思うが、しばらく家には来ない方がいい』
「・・・・・・」
『聞こえているのか?』
「聞こえてます・・・。それって大丈夫なんですか?」
「あぁ、心配ない」


知らなかった。
私の前で彼はそんな素振りを見せたことは無い。


私の言葉を信じると言ってくれたあの日以来、赤井さんについても私に聞いてくることは無かった。


どこかそれに安心していた私は、根本的な問題が解決していないことから目を背けていたんだ。


『貸している本はそのまま持っていて構わない。何かあったらいつでも電話してくればいい』
「・・・・・・はい」
『お前が気にすることじゃない。わかったか?』


赤井さんは私に甘すぎると思う。結局この状況でも、私を心配してくれるのだから・・・。


電話を終えたあとも頭の中では、降谷さんと赤井さんの顔がぐるぐると浮かんでは消えてを繰り返していた。


あの二人の確執が、簡単にどうにかできるものじゃないことはわかっている。けれどこのままでいいんだろうか?


赤井さんの言葉に甘え、降谷さんの優しさに甘え、私は逃げ続けてもいいんだろうか・・・?

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