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▽ 17-1



赤、緑、金。いつの間にか街全体がキラキラと輝く季節になった。すれ違う人々も、どこか浮き足立っている。街の雰囲気のせいか、はたまたこの寒さのせいか・・・、肩を寄せ合う恋人達を最近はよく見かける。


私がこの世界にやってきて四ヶ月が過ぎようとしてた。


色々な出来事があったせいか、まだ四ヶ月という事実に驚きを隠せない。元の世界への唯一未練といえば、あの世話好きの友人が私を心配していないかの一点のみで、そこまであの世界に固執していない自分を少し薄情に思う。


「四ヶ月ってあっという間だな〜」
「何が四ヶ月なんだ?」

ぽつりと呟いた独り言。予想していなかった返事に慌てて後ろを振り返る。


そこに居たのは、スーツ姿の降谷さん。リビングで待っていたはずの彼の姿がすぐ後ろにあり、ぱっと目を見開く。


「もうちょっとでできるから、あっちで待ってて下さいよ」
「手伝うことはないのか?」
「大丈夫ですよ。お仕事終わりなんですから、座っててください」

こちらを気にしている背中をリビングの方へと押しやると、彼はしぶしぶソファへと向かいそちらに腰掛ける。


降谷さんが仕事終わりに家に来る。

それがいつの間にか日課になっていた。

もちろん忙しい彼が、毎日ここに来れるわけではない。何日も続けて来れない日もあれば、夕食をとるには遅すぎる時間にやって来ることもある。


それでも時間を見つけては、私に会いに来てくれる彼。疲れているのか、夕食を作っている間にソファで寝てしまっていることもあった。出来上がった夕食を持っていくと、真剣な顔で携帯を触っている日もあった。


「・・・・・・好きなんだよなぁ・・・」

案の定今日も眉間に皺を寄せて携帯を睨んでいる彼。

ポアロでニコニコと愛想を振り撒いている安室さんからは、想像もつかない今の姿。


そんな姿を私の前で晒してくれる。私の前では飾らない姿でいてくれる。


その事実がたまらなく嬉しいんだ。





「ご馳走様。美味かったよ」
「よかったです」

食事を終え、二人並んで一息をつく。何をするわけでもなく、他愛もない話をするこの時間が今の私にとってとても大切なものになっていた。


「あ!イルミネーションだ。梓さんがここ綺麗って言ってたんですよ」
「なまえもこういうの好きなのか?」
「一応女なので憧れますね。降谷さんは、イルミネーションとか好きじゃないですか?」
「イルミネーションは嫌いじゃないが、あの人混みが好きになれない」
「あぁ・・・、なんかすごく納得です」


ニュース番組の途中で流れたイルミネーション特集。キラキラと輝く街並みに憧れを抱かずにはいられない。

まぁ隣の彼は、イルミネーションの美しさよりカメラに映る人の多さにげんなりしているようだけど・・・・・。


「ちなみにクリスマスとかって・・・「仕事だ。梓さんが休むみたいだから、朝からポアロに行かなきゃいけない」
「ですよね・・・」


そりゃそうだ。クリスマスデートなんて夢のまた夢なわけで、彼にそんな時間の余裕はないだろう。


頭では分かっていても、寂しさからか小さく溜息が零れそうになるのをぐっと堪える。

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