▽ 14-12
目の前のこの人が嘘を言っているようには見えなかった。いつもの自信に満ち溢れた姿とは違い、私の胸中を推し量るようにじっとこちらを見ている彼。
視線が交わると大きく脈打つ心臓は、あれこれ考えてしまう頭より何倍も素直らしい。
嬉しくないわけがない。
ずっと、ずっと好きだった人。
会えただけでも奇跡のような降谷さんが、私を好きだと言ってくれている。
改めてそれを理解するとかっと頬が熱くなる。
「貴女の気持ちが知りたいんだ」
「私は・・・・・・」
好き。そう伝えてもいいんだろうか。
私がそう伝えたことによって何かが変わりはしないか。誰かに迷惑をかけてしまわないか。頭の中をそんな考えがぐるぐると巡る。
「また余計なことを考えてるだろ」
「え?」
「赤くなったり、顔を顰めたり・・・。考えすぎなんだよ」
そう言うと降谷さんは小さく溜息をつき、そのまま右手を私の頭にのせた。そしてそのまま髪をくしゃりと撫でる。
「味方だって言ってくれたってことは、少なくとも俺のことを嫌いなわけじゃないんたろ?」
「嫌いじゃないです」
「じゃあ好き?」
「・・・・・・その聞き方はずるいです。誘導尋問みたいじゃないですか」
「こうやって聞かなきゃ素直に答えないだろ」
にっと口元に笑みを浮かべた姿があまりにも絵になっていて、彼の手が触れている頭が熱を持つ。
隠しようのない自分の気持ちを改めて自覚する。
・・・・・・
・・・・・・
私は降谷さんが好きだ。
「・・・・・・好き・・・です」
「それは恋愛対象として?」
「・・・っ、じゃなきゃ好きなんて言わないです」
「沖矢昴よりも?」
「なんでここで昴さんがでてくるんで・・・っ!?」
言い終わる前に降谷さんに強く引き寄せられ、ぎゅっと抱き締められる。
全身に感じる彼の体温。ちょうど私の頭は彼の胸に押し付けられる形になっていて、どくんどくんという心臓の音が聞こえる。
そっと音に手を伸ばすと、たしかにその鼓動を感じる。
「・・・・・・もしかして降谷さん緊張してましたか・・・?」
まさかそんなわけがない。そう思いつつも、私と同じくらいの速さで脈を打つ彼の心臓がその可能性を感じさせた。
「当たり前だろ・・・。好きな奴に気持ちを伝えるのに緊張しない奴がいると思うのか?」
ぽすりと私の肩に頭を預けながらそう言った降谷さん。
“愛おしい”
生まれて初めて初めてそう思った。この世界で出会うまで私は彼のこんな姿は知らなかったし、想像だってしていなかった。
「大好きです・・・」
口から零れたその言葉に、私の背中に回されている腕に力が入った。
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