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▽ 14-9



Another side

やはりその男の前では、素直に弱さを見せるんだな・・・・・・。


まるで何かファインダー越しに彼らを見ているような感覚に陥る。


いつだってそうだった。なまえさんは、俺の前では・・・・・・、いや違うな・・・。あの男の前以外では無理をして自分を作るんだ。


「・・・・・・はぁ・・・」

小さく零れた溜め息に彼らが気づくことは無い。

帰ろう、ここに俺がいる必要はないはずだ。


そのまま彼らに一言声をかけて帰ろうとしたとき、部屋に携帯の着信音が響く。どうやらその携帯の持ち主は、沖矢昴のようで彼は画面を見るなり眉間に皺を寄せた。


「大丈夫ですよ。昴さんの顔を見たら落ち着きました」
「ですが・・・」
「本当に平気ですから」

そんな彼になまえさんは笑顔を向けると、沖矢昴はしぶしぶ立ち上がる。

そして俺の前までやってくると、いつもの胡散臭い笑顔ではなく真面目な様子で口を開いた。


「安室さん、こんなことをお願いするのは、筋違いかもしれませんがもう少しここにいてあげてもらえませんか?」
「え?」
「どうしても外せない用事ができたんです。けれど彼女を一人にするのは心配なので・・・」
「・・・その用事はどうしても今日じゃないといけないんですか?」


彼女がこんな状態だというのに置いていくのか?俺がそばにいるより、この男が隣にいる方が何倍も彼女の心は落ち着くはずだ。それなのにそんなことを俺頼むだなんて・・・・・・。


「どうしても外せないんです。お願いします」
「・・・・・・わかりました」


去り際、なまえさんに再び声をかけこの部屋をあとにした沖矢昴。

そして部屋には再び沈黙が流れる。





「・・・ありがとうございます」
「・・・何がだ?」
「ここに居てくれて。それに私のことを心配してくれて・・・。まずは謝罪よりお礼を言うべきでした」

幾分か落ち着きを取り戻したなまえさんは、そう言いながら目尻を下げる。


「こういうときは謝罪よりお礼の方が嬉しいって、前に昴さんにも言われたのを思い出しました」
「・・・・・・っ・・・」


また沖矢昴の名前が出るのか。言い様のない悔しさから、ぎゅっと手に力が入る。

なんなんだ、一体・・・。


彼女が俺に対して弱さを見せずに強がることも、

彼女の口から沖矢昴の名前が出ることも、

目の前で見せられた彼らの親しげなやりとりも、


全てが俺の心を乱した。

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