▽ 14-7
Another side
安室という男は、基本的に人当たりがよくいつもニコニコとしている。取り乱した姿なんて、俺が知っている限りでは、赤井さんとのあの一件くらいしかない。
そんな彼があんなに慌ててなまえさんの所に駆けつけたことに驚きが隠せなかった。
そういえば昴さんも彼女を前にしたとき、彼らしくない様子だったな・・・と、あの雨の日の出来事を思い出す。
みょうじ なまえ・・・・・・、一体彼女は彼らとどういう関係なのか。彼らの言うようにただの友人とは考えにくい。
「あ、そうだ・・・」
昴さんにさっきのことを伝えておいた方がいいんじゃないか・・・?きっと後から知れば心配をするだろうし、とりあえず話だけでもしておくべきだろう。
探偵事務所の外の階段で、蘭やおっちゃんの姿がないことを確認すると携帯を取り出し昴さんの電話番号を押す。
「あ、もしもし昴さん?今大丈夫?」
『大丈夫だよ。何かあったのかい?』
「実は今日・・・・・」
数回のコール音の後、電話に出た昴さんに先程の出来事を伝えると次第に彼の口調が変わる。
『彼女に怪我はなかったのか?今どこにいる?』
「大きな怪我はなかったと思う。今は多分家に帰ってると・・・『わかった。あの子を助けてくれてありがとう』
そう言い終えると、ツーツーと機械音が流れ電話が切れたことに気付く。
「・・・え、切れた?嘘だろ」
「コナン君?こんな所で何してるの?」
「あ、蘭姉ちゃん。ちょっと博士から電話があって・・・」
「もう遅いから部屋に入らなきゃダメよ?」
「はーい!」
突然切れた携帯をぽかんと見つめていると、玄関の扉が開き蘭がこちらを手招きする。
・・・・・・流石に鉢合わせすることはないよな・・・?
昴さんの様子からして、今からなまえさんの家に向かうかもしれない。そして彼女を送り届けると言っていた安室さん。
あれから時間も経っているし、きっと安室さんは帰っているだろう・・・。
念の為それを伝えようと昴さんに再び電話をかけてみるも、彼が電話に出ることはなかった。
「コナン君まだー?」
「今行くよ!」
・・・・・・もし鉢合わせしたとしても、昴さんの状態なら大丈夫だろう・・・。希望的観測でしかないが、今の俺はそう願うしかなかった。
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