▽ 1-1
「・・・すか?・・・ですか?」
誰かの声がする。
もう朝なのかな・・・・・・でも一人暮らしの私には起こしてくれる人なんていないはず。
あれ・・・・・・?ていうか私何してたんだっけ?
「・・・大丈夫ですか?!」
一際大きな声がして目が覚める。周りを見ると、声の主であろうウェイター姿の男性が心配そうにこちらを見ていた。
ここは・・・・・・非常階段?そうだ・・・さっきまで非常階段で酔いを覚ましていたんだ。そうしたら手すりが折れて・・・・・・。
ふと手すりを見るとさっきは折れていたはずの場所は元通りになっていて、私自身も怪我をしている所はない。
「大丈夫ですか?もし必要なら救急車を呼びますよ?」
「あっ・・・いえ大丈夫です。少し気分が悪くなっただけなので。ご心配をお掛けしてすいません・・・」
夢・・・だったのかな・・・?
お酒も飲んでいたし、いつの間にかここで潰れていたのかもしれない。
「大丈夫ならいいですけど・・・もう時間も遅いですしタクシーを呼びましょうか?」
そう言われ時計を見ると、23時を少し過ぎたところだ。酔いを覚ましに出てきたのが22時半すぎだったから、まだ友人が店にいるだろう。
「いえ、まだ終電が間に合うと思うので大丈夫です。それに友人も一緒ですし。ありがとうございます。」
男性にお礼を言い、その場を離れようとすると不思議そうな表情の男性。
「ご友人ですか?このビル飲食店はうちのバーだけなんですが、今はお客様はいらっしゃいませんよ・・・?」
「え?」
先程まで飲んでいた店の名前を伝えても知らないと首を振る彼。やはり頭などを打たれているのでは・・・と心配そうにしている彼が嘘をついているようには見えない。
どういうこと。どくんどくんと鼓動が大きくなり背中を嫌な汗がつたう。
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