▽ 1-2
陳列棚の前で背伸びをしながら必死に何かに手を伸ばす小さな男の子。
それは見間違えるはずもない蓮で。
そして少し向こうに見える棚の影には、そんな蓮を心配そうに見る大の男3人組の姿。
「蓮?」
思わず蓮に声をかける。ちらりと後ろの陣平ちゃんに視線を向けると、口元に人差し指をたてて首を左右に振る。
・・・・・・なるほど、何となく状況は分かった気がする。
降谷ちゃん達までいるのは、謎だけど。
くすりと小さく笑うと、そのまま膝を折り蓮に視線を合わせた。
「っ、けんじ!!」
「1人でおつかいか?えらいなぁ」
くしゃくしゃと頭を撫でると、蓮の大きな瞳にじわりと涙の膜が張る。
今にも泣き出しそうだけど、ぐっと拳を握り何とかそれを耐えた蓮は眉を下げながら棚の上の方を指さす。
「ママにね、シチューのはこかってきてっていわれたのに・・・・・・っ・・・」
「そゆことな。ちゃんと見つけれたのすげぇじゃん」
「っ、」
ちょっと前までおつかいどころか、まだ赤ん坊だったってのに子供の成長ってのは早いもんだ。
立ち上がった俺は、そのまま蓮を抱き上げた。
「なまえがいつも買ってるやつどれか分かるか?」
「・・・んっとね、・・・・・・これ!あおとしろのやつ!」
「よし!じゃあそれカゴに入れよ」
小さな手でシチューのルーを掴むと、牛乳の入っていたカゴにそれを入れる。
任務達成と言わんばかりに、泣きそうな顔から満面の笑みに変わる蓮。
「けんじ!ありがとう!」
「おう。1人で大丈夫か?」
「うん!ぼくつよいからできる!」
カゴを両手で持ち、レジへと向かう蓮の背中を見送る。
なんつーか、あの捻くれ者2人の子供があぁも素直に育ったことに感動だな。
「・・・・・そこの不審者3人、早く追いかけねぇと見失うぞ」
冗談めかしてそう言えば、棚の影から出てくる陣平ちゃん達。
「サンキュ、萩」
「おう。てか陣平ちゃんは分かるけど、なんで降谷ちゃん達まで?」
「まぁなんていうか成り行き?」
「ははっ、なんか面白そうじゃん。俺も混ぜてよ」
こうして怪しい大人が3人から4人に増えた。
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