番外編 ゼラニウム | ナノ
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▽ 1-1


いつものように毛利探偵事務所に差し入れを持っていくと、どうやら3人はこれから外出するところらしい。話を聞けば、どこかのお金持ちの元に脅迫状が届いたらしい。


話の流れでその依頼者との待ち合わせ場所である黒ウサギ亭≠ニいう店にやって来たのだが・・・・・・、


「・・・っ、ちょっとちょっとここって料亭なんかじゃなくてバニーガールのクラブじゃない!」

店のドアを開けた蘭さんが声を上げる。たしかに彼女の言うようにここは普通の食事処ではなさそうだ。


まぁでもこれも捜査の為、と思いながら席につく。


「ったく、こんな店だとわかってたら、コナン君連れて来なかったのに」
「ボクなら平気だよ。玉子焼きとかカレーもあって、美味しそうだよ」

そんなコナン君と蘭さんのやり取りを横目に、依頼者である諸岡さんと話す毛利さんの言葉に耳を傾ける。


どうやら諸岡さんは、贔屓にしている女性がこの店にいるらしく足繁くここに通っているらしい。そんな彼の元に届いた脅迫状。そこには『命が惜しくば黒ウサギ亭に近づくな』と切り抜き文字で綴られていて、その犯人を毛利さんに捕まえて欲しいということだ。


そこにこの店で働く朝倉さんという女性も加わり、話をしていると毛利さんが「お!」と大きな声を上げ少し離れた席にいたバニーガールを指さした。


「ありゃ随分とまぁべっぴんなバニーちゃんだなぁ」
「・・・・・・ちょっとお父さん!」

実の娘の前で・・・、と呆れつつも毛利さんが指さした方向を見る。そこにいたのは見覚えがありすぎる横顔と淡い茶髪のロングヘア。思わず声を上げそうになり、どうにかそれを飲み込み代わりに溢れたため息。


・・・・・・最悪だ。どう考えてもめんどくさいことに巻き込まれる予感しかしない。

心の中で幼馴染みに助けを求めてみるけれど、もちろん返事なんかあるはずもなかった。





季節外れの風邪をひいて体調を崩した香織に頼まれた臨時バイト。飲食店だって聞いてやって来てみれば、まさかのバニーガールのクラブで即帰ろうとしたけど店長を名乗る男に引き止められて今に至る。


聞いていたよりも時給をアップしてくれるらしくて、まぁ2.3日のことだしって渋々頷いたのが少し前の出来事だ。


仕事もちょうど有給消化中で暇だし、お小遣い稼ぎにはちょうどいい。もう少しで陣平との記念日もあるし、いいプレゼント買えるかもなんて思っていた。それにバニーガールの衣装も可愛いし。


いざ、フロアに出て接客を始めてみればお客さんのほとんどは男の人で触れてこそこないけど下卑た視線をチラチラと向けられるのは気分が悪い。・・・・・・うう、我慢。これは仕事・・・、コレハシゴト・・・、シゴト・・・、オカネノタメ。


何度も念仏のように頭の中で繰り返す。さすがに給料を貰ってる以上、学生の頃みたいにすぐキレるわけにもいかない。

あっちこっちから呼ばれるからロクに休むこともできなくて、ずっと保っていた作り笑顔に疲れてきた時だった。フロアを離れ、お手洗いに向かおうとした私の腕を誰かが強く引いた。


人気のないカウンター脇に引っ張りこまれた私は、思わず睨むように腕を引いた奴を見上げる。


「・・・・・・っ、れ・・・?!」
「大声を出すな。あとその名前で呼ぶな、前も言っただろ」

私の腕を掴んでいた手を解くと、言葉を被せるようにため息混じりにそう言ったのは零だった。


「なんでここにいるの?・・・・・げ、もしかしてここ通ってるとか?」
「そんなわけないだろ!仕事だ、仕事。そういうお前こそなんでこんな所で働いてるんだ?松田はこのこと・・・」
「っ、」
「・・・・・・知らないんだな。ったく、バレて揉めても知らないぞ」


そう。私の心情とは関係なしに、ここでの期間限定バイトのもうひとつの問題は陣平に仕事の詳細を話していないことだ。

香織から頼まれて何日かだけバイトしてくるとは伝えたけど、多分居酒屋みたいなとこ!とだけしか伝えてなかったから・・・、さすがにバニーガールのクラブだとは思っていないはず。


まずい。って3文字が顔に出ていたんだろう。零はまた深いため息をつく。


「・・・・・・やっぱバレたらやばいと思う?」
「僕なら自分の恋人がそんな格好をしていたら、絶対に許さないかな」
「えぇ、バニーちゃん可愛くない?」
「可愛い可愛くないの問題じゃないだろ。大体お前は昔から無駄に目立つことをいい加減に・・・、」


・・・・・・始まった、零のぐちぐち小言。ヒロだったら注意するにしても、絶対に可愛いねって言ってくれるのに。なんて不貞腐れた気持ちを抱えつつも、たしかにこの格好はさすがにまずいよなとは薄々自分でも思ってた手前強く反論することもできなくて。

一応、友達の代理だってことを説明すれば何とか零のお小言タイムは終わったけど、「松田にバレる前にやめとくべきだと思うがな」とクギを刺されてしまった。


「ねぇ、でもさ!この店のバニーガールの中で私が1番可愛いでしょ?」
「・・・・・・全くもって興味がない。それになまえは僕のタイプじゃないので」
「〜〜っ、その笑顔で言われるのムカつく!!今度ヒロに会ったら絶対チクってやる!!」
「はぁ、ホントお前は変わらないよな」


あの喫茶店で見た時と同じ、120%の作り笑顔でそう言われしまう。ほんっっっとに昔からムカつく奴!!!

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