番外編 ゼラニウム | ナノ
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▽ 1-1


※ ここから先は 警察学校編 Wild Police Story のネタバレ、内容の一部改変を含みます。苦手な方はご注意ください。


警察学校への入校前日。


「絶対絶対浮気しないでよ!!!私の目がないからって他の女とイチャついたら殺す!!!」
「萩じゃあるまいしやらねェよ。てかすぐ殺すって言うな、物騒」
「その萩原が一緒だからもっと不安なの!!!」


最後の夜だからと、家に泊まりに来たなまえはキッと眉を吊り上げながらギャンギャンと騒ぎ立てる。


大学を卒業したら警察学校に行く。なまえにそう伝えた日のことを思い出した。


予想はしていたけれど、今までずっと同じ学校だったから俺と離れるのが嫌だとガキみたいにごねた。まぁそれはそれは酷かった。卒業までろくに会えない、連絡もあまり取れない。それを話すと朝から晩まで泣くからさすがに参った。


挙句の果てにこのバカは、「私も一緒に行く!」なんて言い出すもんだから頭を抱えた。

ケラケラ笑いながら隣でそんなやり取りを聞いていた萩が、「でも警察学校って厳しいからロクにお洒落できねぇよ?陣平ちゃんにそんなとこ見られてもいいの?」と言えば、「それは絶対無理!!松田には可愛く思われたいもん!」と諦めてくれたから心底ほっとした。


寂しいと泣くアイツを宥めて機嫌をとって、ようやく「いい子で待ってるからちゃんと帰ってきてね」と言質を取ったときには心の中でガッツポーズをした。



けれどいざ明日から離れるとなるとこの有り様。萩が「可愛い女の子いるかな?♪」なんてコイツの前で言うからだ。ここにはいない親友を恨んでも意味はないと分かっていても、そう思わずにはいられない。



「可愛い子いても浮気したら許さないよ」
「私より可愛い子はいないって、いつもの自信満々なお前はどこいったんだよ」
「は?なに当たり前のこと言ってんの?私より可愛い子なんかいるわけないじゃん」


昔流行った何かのキャラクターみたいに俺にしがみつくなまえは、真顔でそう言い切る。


自信があるのかないのかどっちだよ、なんて思わず心の中で突っ込む。


「ちなみにお前の浮気の定義ってなに?」
「目が合ったら」
「・・・・・・・・・はぁ、」
「何そのため息!!やっぱり浮・・・・・っ・・・?!」


盛大なため息をついた俺を見て、うるうると瞳を潤ませるなまえ。気が付くとそんなバカの腕を引き、背後にあるベッドに押し倒していた。

その衝撃で言葉を詰まらせたなまえを見下ろす。


「浮気なんかする余裕ねェよ」
「っ、」
「遊びに行くワケじゃないんだ。それに・・・、」


キャンキャン犬みたいに鳴いて怒っていたかと思うと、泣きそうな顔で唇を震わせる。喜怒哀楽がこんなにも露骨な奴に出会ったことがない。

真っ赤な顔で俺を見るなまえに、心の1番奥の深い場所がぞくりと刺激される。


「お前だけでいい」
「・・・・・っ、・・・んん・・・ぁ」
「だからもうそれ以上喋んな」


寂しいのも、不安なのも、自分だけだと思い込んでる馬鹿な奴。

お前と離れるのが初めてなのは俺も同じだろ。


そんな想いを言葉にする代わりに、細い首筋に唇を寄せた。


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