番外編 ゼラニウム | ナノ
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▽ 1-1


※ 本編後、結婚した2人に子供がいる if のお話です。苦手な方はご注意ください。(子供の名前変換なし) 短編 意地っ張り×意地っ張り の息子ちゃんの幼馴染みの女の子が出てきます。



「じゃあ行ってくる」
「行ってきます!」
「2人とも気をつけてね!」


よく晴れた日曜日の朝。並び歩く2つの背中を見送っていると、ずしりと後ろから頭に腕を置かれ重みに体がぐらつく。


振り返ると眠たそうに欠伸をする陣平がいて、いつもの半分くらいしか開いていない彼の瞳と視線が交わる。



「おはよ。朝ごはん食べる?」
「・・・・・ん、食う。日曜だってのにアイツらこんな朝から出掛けンのか?」
「大学のオープンキャンパスだって。しかも私達の母校♪ 」
「あぁ、そういやこの前なんか言ってたな」



リビングに戻り、2人分の朝ごはんを用意しながらもう蓮達も大学なんて考える歳になったんだなぁ、なんて月日の流れを実感する。



「ていうか、あの2人そろそろ付き合ったりしないのかな?」
「蓮と紗菜?」
「そうそう!中学の頃は蓮がツンツンだったけど、最近はいい感じだと思うんだけどなぁ」
「いい感じねェ・・・。まぁアイツもアイツなりに色々考えてんじゃね?」


小学生の頃から紗菜ちゃんのことは知っているし、あの子がずっと蓮を好きで追いかけていたのも見てきた。思春期真っ只中だった蓮が冷たく突き放しても、あの子はずっと蓮の傍にいたわけで。そんな姿を見てきた身としては応援せずにいられない。


昔の自分と重なるっていうのも大きいよな、なんて思うんだ。






高校より広い構内。すれ違う人は当たり前だけど、自分より大人に見えて大学ってすげぇななんて漠然とだけど感じた。



「蓮のお父さん達ってここの卒業生なんだよね?」
「あぁ。何だかんだ小学校からずっと一緒らしいからな、あの2人。付き合い始めたのも大学の頃らしいし」
「幼馴染みで結婚ってホント憧れるなぁ♪ 私も絶対蓮と結婚する!!」
「デカい声でバカなこと言ってんじゃねぇよ」


少しだけ大人びた服装とは裏腹に、目をキラキラと輝かせる紗菜の横顔は昔から変わらない。


こんっと軽く頭を小突くと、紗菜の大きな瞳がふっと垂れ下がる。毎日顔を合わせているってのに、こんな些細なやり取りですらコイツは嬉しそうに笑うから。


いつからかその姿を見ると心臓が早鐘を打つようになった。コイツが他の男と話してたらムカつくし、隣にいるのが当たり前だって思うようになったんだ。



今更、小っ恥ずかしいから素直になんて言えねぇけど。



ずっと傍にいたから改めて気持ちを伝えるなんてタイミングも掴めねぇし、恥ずかしさが勝っちまう。



マジで父さんどうやって母さんと付き合い始めたんだ?
真剣に父さんに相談しようかな、なんて血迷うくらいには現状をどう打破すべきかここ最近はずっと考えていた。



研二の話を聞く限り、今の俺達と同じような感じだったらしい両親。まぁ今では周りの親達よりも仲がいいのは誰よりも傍で見てきたから知ってるけど、今の2人があぁなるまでの過程を詳しくは知らないから。



特に付き合いだしたきっかけだけは、頑なに話してくれねぇんだよな。主に父さんが。ふざけて研二がそれを話そうとした時は、思いっきり父さんに蹴られてたっけ。



「蓮?」
「っ、悪ぃ、ぼーっとしてた」
「学校説明終わったら、お昼ごはん挟んで模擬授業だって。サークル紹介とかもあるらしいよ!」


顔を覗き込んできた紗菜との距離が思ったよりも近くて、思わず視線を逸らしてしまう。


けど紗菜はそんな俺の態度なんて気にする素振りはなくて、すっと俺の腕を掴み人が集まっている方へと腕を引いた。

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