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※ 本編後、結婚した2人に子供がいる if のお話です。苦手な方はご注意ください。(子供の名前変換なし) 本編のオリキャラ出てきます。
「じゃあ夕方には迎えに来るから、じぃじ達の言うことちゃんと聞いて待っててね」
「うん! ばいばい!」
久しぶりに訪れた実家。高校の同窓会に参加するために、陣平と一緒にお母さん達に蓮を預けに来た。
実家で蓮を預かってもらったことは今までも何度かあったけど、その度に後ろ髪を引かれる思いなのはきっと私の方で。前回も用事を済ませ急いで迎えに行くと、蓮は「じぃじにおもちゃもらった!」ってニコニコと楽しそうに笑っていた。
初孫にとにかくデレデレのパパ。私に対しての何倍も蓮には甘い。蓮の中で、実家=何か貰えるって認識になってるみたいで今日もパパに手を引かれながらリビングへと向かう足取りはどこまでも軽やかだった。
「いつもすみません。なるべく早めに迎えに来ます」
「いいのよ、気にしなくて。久しぶりなんだし、2人でゆっくりして来てね。うちの人も蓮君と遊ぶの楽しみにしてたし」
「ありがとうございます」
お母さんと話す陣平を横目で見ながら、ふと玄関の靴箱の上に置かれた時計を見ると同窓会の時間まであと少し。
隣の陣平の服の袖を引いた。
「陣平、時間!そろそろ行かなきゃ」
「だな。じゃあよろしくお願いします」
「また迎えに来る前に連絡する!パパにもありがとうって言っといて!」
「運転気をつけてね。行ってらっしゃい」
小さく頭を下げて玄関をのドアに手をかける陣平。玄関を出ると家の前に停めていた車に乗り込んだ。
*
学年全員とまではいかないが、それなりに人数が集まったらしい今回の同窓会。ホテルとかでやる畏まったもんじゃなくて、最近できたイタリアンのデカめの飯屋を貸し切っているらしく俺達が店に着く頃には各々盛り上がっているようだった。
「松田〜!久しぶりだな!」
「おう、久しぶり。元気だったか?」
店に入るなり、声を掛けてきたのは高3の頃のクラスメイト。数年ぶりの再会に、自然とテンションも上がる。
隣ではなまえもかつてのクラスメイトに声を掛けられていて。ひらひらと手を振り返したかと思えば、絡めていた腕をぐっと引かれた。
「っ、ンだよ」
「同窓会だからって他の女とちょろちょろしてたら許さないからね」
「へいへい。ほら、呼ばれてるぞ」
なまえの方へと傾いた体を戻し、その背中をツレの方へと押す。相変わらずの思考回路に、思わずくすりと笑みがこぼれる。
そんな俺を見ていたツレのうちの1人が、揶揄うみたいに俺の肩に腕を回しながら笑う。
「相変わらず仲良いねぇ、お前とみょうじさん。そろそろなんか進展あった?」
「てかマジで昔から可愛かったけど、久しぶりに見たら美人度増してね?」
「分かる!大人っぽくなったよなぁ」
20代後半になっても、久しぶりに集まれば会話の内容なんて高校の頃から変わらない。
ただ変わったのは俺となまえの関係なわけで。別に隠してるわけじゃねェけど、萩以外のクラスメイトとは頻繁に連絡をとることもなかったからなまえと俺が結婚したことを知らない奴の方が多い。
何となく今ここで結婚してるって報告すんのも騒がれそうだな、なんて思っているとすぐ後ろから聞き慣れた声がした。
「もうみょうじさんじゃねぇんだよなぁ。な、陣平ちゃん♪」
めんどくせェのが来た・・・。
周りが萩のその言葉に食いつかないわけがない。
「何、どういうこと?!」
「もしかして・・・・・、」
1人の視線が俺の左手に向けられる。もちろんそこには、あいつと同じ銀色の指輪があるわけで。
「えーーーー!!!!結婚したの???!!!!!」
少し離れた場所で話していた女連中から、悲鳴みたいな声が上がる。
もちろんその中心にいるのはなまえだ。
その声に比例して、俺の周りも騒がしくなる。
「はぁ?!お前マジか!あんなに昔は興味ねェって言ってたくせに!」
「ふざけんな!なまえちゃんはみんなの目の保養だったんだよ!」
「っ、昔は昔、今は今なんだよ!」
「ははっ、今はなまえのこと大好きだもんなぁ、陣平ちゃん♪ 」
ギャーギャーと騒がしい周りと、それを煽るみたいな萩。小っ恥ずかしいけど、周りの奴らも本気で言ってるわけじゃねェのが分かるから。
最終的には、「おめでとな」って笑ってくれる奴らだから。
「てか蓮は?連れてこなかったのか?」
「あぁ、なまえの実家で預かってもらってる」
「待て待て、まさか子供・・・?」
「可愛いぜ?もうすぐで3歳♪ 陣平ちゃんのガキの頃にそっくり」
「やば!めちゃくちゃ可愛いじゃん!」
「ははっ、ホントだ!小さい松田だ!」
「でも微妙になまえちゃんの面影もあるなぁ」
いや、お前の子供かよ。
そうツッコミそうになるくらいには、デレた顔で蓮の写真を周りに見せる萩。なまえの親父さんの次に、蓮に甘いのが萩だからまぁ無理もない。
それでもこうやって昔からのツレに祝ってもらえることは素直に嬉しいって思った。
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