番外編 ゼラニウム | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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▽ 1-1


※ 本編後、結婚した2人に子供がいる if のお話です。苦手な方はご注意ください。(子供の名前変換なし) 時系列などゆるっとしてます。



「ママ・・・っ、パパ・・・っ、」

目の前には大きな瞳からボロボロと涙を流す小さな男の子。


「大変、迷子かな?」
「探偵団の出番ですね!」
「この子の親、見つけてやろうぜ!」


そんな男の子の前で意気込むのは、探偵団のいつもの面々。


博士に連れられやって来たのは、隣町にあるショッピングモール。仮面ヤイバーショーを見るためにやって来たオレ達をショッピングモールに送り届けると、博士は何かの研究の打ち合わせが隣のカフェであるらしくてそっちへと向かった。


子供達のお守りを任されたのは、もちろんオレと灰原の2人。


何も起こらないでくれよ、と思ってた矢先にこの迷子の男の子と出会ったってわけだ。



それにしてもこの子、どっかで見たことある気がするな。

どことなく誰かに似ていて、見覚えのあるその顔に記憶を辿る。



「お名前はなんて言うの?」
「・・・・・・れん・・・、」
「れん君って言うんですね!上の名前は分かりますか?」
「うえ?」
「父ちゃんと母ちゃんと同じ方の名前だよ。分かるか?」
「・・・・・まつだ・・・、れん、」



涙を両手で拭いながら、男の子が発したその名前に歩美達も「松田?!」と声を上げる。


そうだ、この子あの時警視庁で見かけた松田刑事の息子さんか。


誰かに似てると思ったら、松田刑事にそっくりだな、この子。



「松田って、あの松田刑事?」
「あぁ。この前奥さんがあの子を連れて松田刑事に会いに警視庁に来てたんだ。たまたまオレ達もそこに居合わせてな」
「へぇ、彼って子供いたのね。何だか意外だわ」


あの時あそこにいなかった灰原が、少し驚いたみたいな顔でぽつりと呟く。まぁそうだよな、俺も最初は同じこと思ったし。


何はともあれ、とりあえずはこの子を迷子センターに届けるのが先だ。


はぐれないようにレン君と手を繋ぎ、3階にある迷子センターへと向かう。


1人じゃなくなってほっとしたのか、次第にレン君の表情にも笑顔が戻る。となれば歩美達の興味は、父親の松田刑事に向くわけで。



「松田刑事って家でもサングラスしてんのか?」
「元太君・・・、そんなわけないでしょう」
「お家だとレン君のパパはどんな感じなの?」


歩美の質問に、少し考える素振りを見せたレン君。一生懸命に言葉を絞り出しているようだ。



「やさしいよ!おしごと やすみのときはいつもあそんでくれる!」


「あら、意外と子煩悩なのね」
「おい、灰原。意外とって失礼だろ」


いつもはすましている灰原もこの話題には興味があるようだ。



「あとね、ママとなかよし!」
「松田刑事の奥さん、綺麗な人でしたよねぇ」
「うんうん!可愛かった!」


「どんな人だったの?彼の奥さんって」
「綺麗な人だったよ。なんかちょっと意外だったけど」
「意外って?」
「まぁ見りゃお前もわかるよ」


きっと迷子センターに行けば会えるんだから。





「おい、いい加減泣きやめって。とりあえず迷子センター行くぞ」
「・・・っ、私が手離しちゃったから・・・っ、」
「あぁ、もう!お前のせいじゃねェって!ほら、行くぞ」


大きな瞳に滲む涙を服の袖で拭うと、その手を掴み迷子センターへと向かう。


久しぶりの休日。日曜日ということもあり、ショッピングモールはたくさんの人で賑わっていた。


仮面ヤイバーのショーに夢中になっていた蓮。たしかにその手はなまえがしっかりと握っていたのに、近くにいた人とぶつかった弾みにその手が離れた。


すぐに探したけど、人混みに飲まれた蓮はなかなか見つからなくて。


もちろん心配だし、責任を感じて泣くなまえのことも気にかかった。


やって来た迷子センターで係の人と話していると、聞き覚えのある声がして思わず振り返る。



「すみませーん、迷子の保護お願いします」

子供らしい声にはそぐわない、はっきりとした言葉。



「蓮!!!!!」

迷子≠チてワードに反応したなまえが弾かれたように振り返る。


探偵ボウズに手を引かれていたのは、蓮だった。


立ち上がったなまえはそのまま蓮に駆け寄り、その体を強く抱き寄せる。


「っ、ママ・・・!!!!」
「蓮ごめんね!私が手離したから・・・っ、」


ほっと心の中で安堵の息をつく。よかった・・・、マジでよかった。


係の人に「お騒がせしました」って頭を下げると、ちびっ子探偵団の前に腰を下ろす。


「お前らが見つけてくれたンだよな、ありがとう。助かったよ」
「俺達探偵団にかかれば、これくらい朝飯前だぜ」


やっと蓮を腕から解放したなまえが探偵ボウズ達に頭を下げる。


「本当にみんなありがとう・・・。蓮もちゃんとありがとう言った?」
「ありがと!!」


なまえの顔を見て泣いていたのが嘘みたいに、蓮はニコニコ笑いながらそう言った。




────────────────


「ホントにこんなに買ってもらって良かったんですか?」
「うん、お礼だから気にしないで。それくらい探偵団の皆には助けられたから」


レン君を見つけてくれたお礼ってことで、なまえさんは元太達に仮面ヤイバーグッズを大量に買ってくれた。(財布を出していたのは松田刑事だったけど)


そろそろ博士との合流の時間だ。

松田刑事達と別れ、ショッピングモールの出口に向かう。


振り返ると松田刑事となまえさん、そして彼女と手を繋いだレン君の後ろ姿。



「蓮、人多いしまた逸れちゃ困るから抱っこな」
「うん!」

レン君を片手で抱き上げた松田刑事。甘えるみたいにレン君は松田刑事に小さな腕で抱きつく。


「いいなぁ。私も抱きつきたいのに」
「場所考えろ、バカ」
「分かってるもん。だから我慢してるじゃん!」
「へいへい、偉い偉い」
「っ、偉いって思ってないでしょ!」
「ははっ、思ってるよ。ほら、」


松田刑事が差し出した手を嬉しそうに握るなまえさん。隣で同じくその光景を見ていた灰原が、ふっと笑みをこぼす。


「随分と可愛らしい奥さんね」
「だよな。何か松田刑事があぁいうタイプの奥さんって意外じゃね?」
「そうかしら?案外お似合いなんじゃない?」


そういうもんなのか?

イマイチ恋愛ってのは理屈でカタがつかないねぇから分からない。


「まぁ奥さんの方がベタ惚れって感じだよな」
「そう見えるのなら名探偵もまだまだね」


したり顔でそう言った灰原は、そのまま歩美達の後を追った。

Fin


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