戻って来い

あれから、何ヶ月が経過したのだろう、相変わらずゴッドイーターは忙しくアラガミを撃退。クレイドルを率いるアリサやリンドウ、ソーマ達は拠点を作ろうと必死になっている。マガツキュウビを倒したことによって進展はあったものの、やはり人手が圧倒的に足りないらしい。

正直、彼女はどうでもよかった。悪く言ってしまえば、誰が死のうと関係ない。

神機を持ち直し、彼女は前を見据える。辺りにアラガミの死体が転がっており今まで彼女がどれだけの時間をかけて倒したのかが窺える。だが、まだ、一匹。

フラリ、と一歩を踏み出した途端、彼女の姿が消える。いや、尋常ではない速さで大型アラガミの背後を取ったのだ。アラガミの咆哮に、臆するでもなく彼女は無慈悲に神機を振りかぶる。


*


ガタンガタン、と揺れるエレベーター。神機をしっかりと握り、彼は精神を落ち着かせていた。今から任務、しかも単独で、だ。別に特別なことではないがやはり単独となると死ぬリスクが跳ね上がるのだ。

昔は、そんなことも考えないで突っ走っていたものだがな、と彼は思う。かつて、死んでもいいと思いながら戦場を駆け巡っていた。でも、それも昔のこと。たった数ヶ月前なのに、なぜか遥か遠い昔のことのように思えて。少し、笑う。

出撃用のヘリポートへと到着したのだろう、一層大きくエレベーターが揺れ動きを停止する。
扉が、開く。そこには、


「……ユキ」

「あ、ヴィレさん。今から任務ですか?」


鼻につく、アラガミ特有の血液の臭い、返り血に彼……ヴィレはギョッとする。


「お前、また何時間も……」

「たまたま、なんかアラガミが多くてね、好都合と思って、全部殺してきたの」


生気が伺えない瞳が向けられる。彼は背筋に悪寒を走らせながら、努めて冷静に彼女へとたずねる。それに対し彼女は抑揚のない声音で淡々と答えた。
エレベーターから降りつつ、ヴィレは息を飲み込む。


「任務なら、一緒に行ってもいいですかね?」

「……休めよ。そんな調子じゃぶっ倒れるぞ……」


そういうと、彼女はゆっくりと首を横に振った。


「ダメ、だって、あの人はがんばってるんだもん。私が、休んでる暇なんてないもの。早く、全部のアラガミ殺して、あの人のところに、行きたいの」


彼は目を細め、そうかと短く呟いた。こう言われてしまうと、なにも言い返せない。いや、言い返しても何も聞きはしないのだ。彼女は。
だから彼は、死ぬなよと伝えてヒバリに通信を繋げる。


「ヒバリ、ユキと一緒に任務に行く」

『了解しました。ユキさん、同期お願いします』

「うん」


端末を同期させ、ユキは任務の内容を確認しつつ、ヘリへと乗り込んでいく。彼も後ろをついていき、乗り込む。せめても、と思い彼は神機を立てかけ、パーカーを脱ぐ。


「これを着てくれ。それじゃああまりにも酷い」

「ん、ありがとう」


彼女も神機を立てかけ、ヴィレからパーカーを受け取り、着込む。
目的地まで時間があるだろうか。彼は神機の取っ手を肩に乗っけ、目を伏せる。

(ジュリウス、今も戦っているのか?早く、早くユキに会って、彼女を、助けてやってくれよ。今のままじゃあ、耐えられないんだ、ユキの、本当の笑顔が、また見たい。それが出来るのは、あんたしかいないんだよ__)


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