フライヤのロビーへと戻るエレベーターがゴウンゴウン、と大きな音を立てて動いている。
そこには、シエルとユキの姿。お互いに負傷はしていないものの、先程の出来事で少し気まずい感じになってしまっている。

しばらくすると、エレベーターは動きを止め、扉が開かれた。


「ユキ!シエル!」


真っ先に隊長のジュリウスが駆け寄ってくる。その後ろにナナ、ロミオ、ギルバート、ヴィレもホッとした表情を浮かべて駆け寄ってきていた。
皆からの歓迎をユキはヘニャリ、と力なく笑みを浮かべ、ただいま〜、と間延びした言葉を紡ぐ。

しかし、とある人物の登場にその場の空気が凍る。


「なんて事をしてくれたんだ、全く」

「……グレム局長……」


一瞬にして、ユキの表情が戦場に降り立ったものへと変わる。グレム局長と呼ばれた小太りの男性は葉巻を片手に彼女を見下しながら言葉を吐き出す。


「大切な神機兵を勝手に使いおって……命令に逆らった罰は……わかっているな?」


ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるグレム局長の後ろから、申し訳なさそうな表情を浮かべたフライヤ職員がユキに近付き両手を拘束する。それをみたブラッドのメンバーは驚きを隠せず、ジュリウスに至っては反論しようとした、しかしそれより先にユキが鋭い声音で言い放つ。


「私は隊長の部下です。貴方の部下ではないですし、貴方の人の命を粗末に扱うような思考には付いていけません。私は私のしたいことをしたまでです」

「何だと……?」


一気に捲くし立てたユキは一呼吸おいて、キッとグレム局長を睨みつける。
それを見た彼は顔を真っ赤にして、葉巻を持っていない手を振り上げた。

パァン、と乾いた音がフライヤのロビー全体に響き渡った。


「その出来損ないの神機使いを懲罰房にぶち込んでおけ!」


気を悪くしたグレム局長はそう吐き捨て、踵を返してしまった。
叩かれたユキは少し顔を振り、痛みをやり過ごそうとするが、そっと伸びてきた手に驚き前を見る。


「全く、無茶をする」

「あ……隊長……私……、ごめんなさい」

「いや……良い。……頼んだぞ」


フライヤ職員にジュリウスはそう言うとユキの頬を撫で、横へと退く。他の皆も心配そうな表情を浮かべてユキを見つめるが、彼女は心配ないよと言わんばかりに微笑みフライヤ職員と共に地下にある懲罰房へと向かう。

その間、沈黙が続いたが不意に一人のフライヤ職員がユキに言う。


「大したものだね、あのグレム局長にあそこまで言うなんて」

「え……いえ……すみません、お見苦しいところを見せてしまって……」

「いや、正直すっきりしたよ……ありがとう」


思ってもいなかった言葉に、ユキは驚いた反面、嬉しいとも思う。
拘束を解かれ、懲罰房の扉が開かれる。何の抵抗もせずに、彼女は扉を潜り、中にあった石で作られた固い椅子に腰を降ろす。


「すまないね、少しの間、我慢してくれ」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


フライヤ職員は小さく頭を下げ、どこかに行ってしまった。

シエルが来るまで、残り__


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