新たに来た仲間 「ちょ、ちょっと兄さん……!待ってよ!書類だってまだ確認してな」 「あーそんなん大丈夫やて、それに召集したのはあっちやろ?事情ぐらい把握してるてー」 声に、エントランスにいた全員が驚きゲートに視線を向けた。そこには、両手に資料を抱えた二人の青年が言い合いをしていたが、視線に気付いたのか敬礼をしながら笑顔を浮かべる。 「本日付けで再び極東支部配属になりました、劉錠緋月です」 「同じく本日付けで極東支部配属になった、劉錠洸月や。よろしく頼むな」 同じ苗字、そして兄さんという単語。そこから二人が兄弟ということがわかるだろう。しかも、以前この極東支部の所属だったというではないか。 少し背の高い、右目を長い前髪で隠した彼、洸月が思い出したかのように弟の緋月に書類を押し付けさっさとエレベーターに乗り込んでどこかに行ってしまった。取り残された緋月は大きな溜め息をついて苦笑を浮かべた。わやわやと彼の周りに集まり、それぞれお帰り、久しぶりですね、など言葉をかけていた。 「アカツキさん、今までは何を?」 「違う支部でいつもどおり、かな。あ……あとは、少し神機兵の研究を……」 そこで、ラウンジの扉が開き二人の男女が出てきた。 「あ、ジュリウスさんとユキさん!」 「ジュリウス……もしかして、ジュリウス・ヴィスコンティ……?」 「失礼ですが、貴方は……?」 「あ、申し訳ありません。僕は劉錠緋月、という者です」 その名前を聞いた途端に、ジュリウスと呼ばれた青年も驚き目を見開く。二人の様子に周りは首を傾げながら見守っている。隣にいたユキが小さくお知り合いですか、と彼に尋ねる。すると、微笑を浮かべながらあぁ、と呟く。 「アカツキ……久しぶりだな」 「やっぱり……ジュリウス、変わってないですね」 「……どういう関係?」 見兼ねたコウタがついつい口を挟む。それに嫌な様子もなくアカツキは切り出す。 「一時期、僕もフライアに身を置いてたことがあったんです」 「え……っていうことは、血の力が!?」 「僕は覚醒してないんですけどね……兄さんが……」 「え!?コウが!?」 長年、極東支部にて神機使いをやっていた劉錠兄弟だが、血の力を秘めているなんて一回も聞いたことなかったし、過去をあまり探られたくない雰囲気があったために深く事情を聞いたことはなかった。 小さい頃ころから神機使いだった、ということだけ知っていたが…… 「じゃあなんで今は……?」 「えっと……ジュリウス……」 「腕輪を見てもらえば分かると思うが、俺たち、ブラッドと同じなんだ。一緒に任務に行った事もある。だが、唐突に違う支部へと行ってしまってな」 説明を放り投げられたジュリウスは少し息を吐き出し、腕を持ち上げながらそう言った。アカツキも腕を上げると、確かにそれはブラッドの皆がしている腕輪と同じもので、話を聞いていた極東支部の人々は信じられない眼差しでアカツキを見ていた。その眼差しにどうしよう、と呟くアカツキ。 そこに、 「おージュリウスやないかー。久しぶりやなー」 「その声……コウか。二人ともここの所属なのか?」 「本日付け、でね。兄さん、今まで何処に?」 「サカキ博士のところに色々な。しかし、久々の面子やなー」 アカツキと肩を組みながらニィと笑いを浮かべるコウにはぁ、と再びアカツキは溜め息を吐き出した。コウはふとジュリウスの隣にいるユキと視線が合い……近寄る。 「お嬢さん、お名前は?」 「え……?あ、ユキ、です」 「ユキさん、よろしかったらこの後一緒にごはっ!」 「兄さん、取り合えず部屋に行くよ」 腹にパンチをして、コウを黙らせてユキに短く謝る。 「すみません、ユキさん。じゃあ皆さんも、また後ほど……ジュリウスも、飲みながら話そう」 「あぁ、そうだな」 そうして、二人は割り振られた自室へと行ってしまった。 「……大丈夫か?ユキ」 「あ、はい……」 「ていうかあれ健在だったんだな……あぁ、コウには気をつけろよ、見境ないから……」 コウタの言葉を頭の隅に置きながら、わかりましたと呟くユキ。 そんな様子を、ラウンジの扉から覗き見ていたヴィレは目を細めた。 (12/14) |