私たちは今、静寂に包まれた廊下を歩いている。空は黒い雲に覆われ、雨こそ降らないものの天気は悪い。重苦しい空気をかき分けて、城野宮さんがいるという屋上へ急ぐ。 「藤くん、花巻さん」 「?」 ふいに先生が口を開いた。 「城野宮さんのことも、分かってあげて欲しいんだ。だから、あまり彼女を責めたらだめだよ」 その言葉に、藤くんは不愉快そうに頭を掻いた。 「ったく、アンタは甘いんだよ。あいつが何をしたか分かってんのか?」 「分かってるよ。でも、女の子なんだ、優しくしてあげてね」 先生は私に目を合わせる。なんだか素直に頷くことが出来ず、曖昧に会釈をする。(色んなことをされて、分かってあげることなんて…) 「花巻。もうすぐ、終わるから」 藤くんと繋いでいる手。どうしてこんなにも勇気をもらえるんだろう。私はその手を強く、強く握り返した。 前 次 表紙へ |