この世界から抜け出す方法はただ一つ。先生が病魔を咀嚼することだ。ただ困難なのは、そのために城野宮さんを改心させないといけないということ。そうしないと、病魔から城野宮さんを引き離すことが出来ないらしい。(改心だなんて…どうやって)

「はあ…」

創られたこの世界で、私を嫌われ者にし、存在を消そうとしている人物に近づいて改心させるなんて不可能な話だ。今だって一人、机に座って考え込むことしかできない。

「惨めね」

突然耳に入ってきた鋭い声に、驚いて顔を上げると問題の人物が立っていた。

「……城野宮さん」

「藤君と仲がよろしいのね」

その言葉は、先ほど二人で保健室から帰ってきたことを示唆しているようで。震える唇をきゅっと結んだ。

「じ、城野宮さんは、間違ってるよ…!」

「なんですって?」

城野宮さんの表情が怖くなったけれど、私は怯むことはなかった。

「まだお仕置きが足りないのかしら」

「……っ!」

居ても立っても入られず、私は教室を飛び出し、女子トイレに駆け込んだ。荒れた息を整えていると、じわりと涙が滲む。

(藤くん…)

この時のわたしは知る由もなかった。城野宮さんがこの時に何を考えていたかなんて。



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