「花巻、危ねえ!!」 「ひゃ…!!」 突如、彼女の中から溢れ出た黒い霧。病魔が姿を表したのだ。そこから離れようとした、そのとき。気を失った彼女の姿が目に入った。 「伊織ちゃん!!」 落ちそうになった彼女を、すんでのところで抱き止める。ただ、その時は助けることしか考えていなくて、今自分がどういう状況にいるのか知らなかった。何故か体いっぱいに重力を感じる。つまり、私達は二人で落ちそうになっている。 「…っ…!」 刹那、ぐいっと、暖かな手に引っ張られ、私と彼女は柵の中へと転がった。 「こんの馬鹿、後先考えずに行動すんじゃねえよ!」 へたりと座り込み、見たのは藤くんの怒った顔。 「あわわわわ…」 藤くんに助けてもらわなければ、今頃。考えただけで、腰が抜けてしまって立つことが出来ない。 《ちくしょう、せっかくの餌を駄目にしてくれやがって!!!》 振り向けば、なんとも気味の悪い病魔が空に浮かんでいる。(ぴーちゃんは可愛かったのに)先生は病魔に臆することなく、とても怖い顔でそれを睨んでいた。 前 次 表紙へ |