なんとかチャイムが鳴る前に着替えを済ませ、運動場に集合する。(ふ、藤くんの体操服だ…)授業的にはこれで問題はないけど、体操服にはきっちり"藤"と刺繍されているわけで。誰かさんが黙ってはいない。そう、先生の話をそっちのけでこちらを睨む、城野宮さんだ。 「あなた、まさかそれ…」 「……」 ぎゅっとズボンを握りしめる。まるで、そこから藤くんに力を貰うかのように。 「ムカつく…ムカつく女…!!」 異常。一言で当てはまる言葉はそれだ。ものすごい形相でこちらを睨む彼女。綺麗な顔立ちなのが、逆にギャップとなって怖さを増していた。 「私と藤君の世界に割り込んだ上に、まだ厚かましいことをするのね…!!!」 「きゃ…!!」 城野宮さんの周りにいた女子が、顔色を変えて私を囲み、服を掴んでくる。その内のひとりは、私の首をぐっと絞めた。体育の先生までもが、その一員となっていて。操られているんだと深く実感する。(く、るしい…) 「てめえら離せ!!」 ドカッと音がしたかと思うと同時に、首から消えた圧迫感。 「藤、くん…!」 「逃げるぞ花巻。こいつら目がイっちまってる」 ぐいっと手を引かれ、私は走った。追いかけてくる女子達から、無我夢中で逃げている途中、ハデス先生が現れる。 「こっちだ!」 藤くんと私は、力いっぱいハデス先生の方へ走り込んだ。 前 次 表紙へ |