出来事は瞬間的すぎて、私たちには何が起きたのか分からない。ただ、口を開けて立っていることしかできなかった。

「なに…?」

「また病魔か?」

ようやく思考回路の流れが良くなり、藤くんは焦りを見せる。(病魔ってぴーちゃんみたいなののことよね)

《アア…、余分なのを1人連れてきちゃったよ。しゃあないね、いいだろう伊織?》

暗闇に響く低い声。思わず身を竦めた。藤くんは無意識だろうか、私を背に庇う体制に。(うひゃっ)(ていうか伊織って…?)

《残念だけど、キミタチはお遊びに使わしてもらうよ》

「何をゴチャゴチャ言ってる、出てこいよ!」

藤くんがそう叫んだ瞬間、空間がぐっとねじれた。バランスを崩し思わず藤くんに掴まる。

「…う……?」

しかし、ぐらりと酷い目眩に襲われ、私は意識を手放してしまった。

遠くに、女の子が見えた気がした。



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