「あうう、」 私は五時限目が始まる数分前にも関わらず、ゆっくりと廊下を歩いていた。(どうして転んじゃうのかな〜…)先ほど何もない場所で派手にコケてしまい、膝をずるりと擦りむいた。友達が心配してくれたけど、保健室までついてきてくれることは無い。それは、友好度が足りないとか、そういうのじゃ無くて、原因はホラーな先生にあるのだけど。(ハデス先生、本当は良い人なのに) 「花巻?」 「ぴゃ!!!」 後から掛けられた声に、驚いて飛び跳ねる。(うわわ、変な声だしちゃった…!)振り向くと立っていたのは藤くんで。(は、恥ずかしいっ!!) 「お前、足ケガしたのか?」 「あ、う、うん! さささっき転んじゃって」 声が震える上に口が回らない。だって偶然にも程がある。幸せすぎるよ…。 「ふーん」 そう言って藤くんは、私の隣を歩きだした。(え…!?) 「ふ、藤くんも保健室?」 「おう。次の授業めんどくせえし」 次は美術の時間。そういえば、藤くんは芸術の時間に大抵姿が見えない。 そうして、二人で保健室のドアを開けようとした時。辺りが真っ暗になった。 前 次 表紙へ |