ごくり、と私はのどを鳴らした。可愛らしい包装の施されたプレゼントを、潰れてしまうんじゃないかと思うほどにぎゅっと抱きしめる。何を隠そう、今日は藤くんの誕生日なのだ。なるべく藤くんがひとりのときを狙って行くにも、私と同じような考えの人は何人もいるわけで…。

「ふ、藤く…「藤くうううん!!!!」

という風に、私の小さな声と勇気は女の子たちに簡単に吹き飛ばされてしまう…。

「……はあ」

手元のプレゼントが、かさりと鳴いた。(どうにも、渡せそうにないなあ…)でも、今日渡せなかったら、このプレゼントは行き場を失ってしまう。明日に渡せたとしても、明日は決して藤くんの誕生日じゃないんだから。それにぴーちゃんに誓ったじゃないか。私は変わるんだ!

「……よし」

ぐっと足を踏み出した。藤くんは女の子から逃げるべく、色々な場所に逃げ隠れしていて、なかなか見つけられない。そして、最後の可能性として残ったのは保健室だった。

「し、失礼します…」

ガラリとドアを開くも、先生は丁度出払っているところだった。(……ここも、いない、か)ため息をつき、入り口から出ようとする。

「花巻?」

「ひゃっ、ふ、藤くん!?」

「珍しいな、どうしたんだ」

今だ。心の中で、誰かが叫んだ。心臓が壊れるんじゃないかというくらい、バクバクする。そして、私は真っ赤になって俯き、さっとプレゼントを差し出した。(あ、な、何か言わなきゃ)

「あ、う、えと…あの、たんじょ、び…」

「…!」

藤くんは驚きながら、そっとプレゼントを受け取る。(迷惑だったかな、やっぱり)反応が怖くて、俯いたままでいると、急に体が圧迫感に襲われ、藤くんの匂いに包まれた。こ、これって…!

「は、はう、なななな…っ!? だ、抱き…っ!!」

「サンキュー、花巻」

目の前が真っ暗になるのが分かった。ああ、多分心臓が壊れちゃったんだな。私の体は機能を失い、煙を吹き出しながらぐったりと藤くんにもたれかかる。

「ったく、これだから手が出せないぜ…」

保健室には藤くんの声だけが、ぽつりと響いていた。


:: 藤くんに愛を


藤誕生日

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