※捏造





それは春の入学式のことだった。小学校から近くの中学校へ繰り上がり、友達もそのまま一緒だったから、私は特に緊張や不安もなく、式を終えた。

「美玖、あとで写真撮ろうね!」

「う、うんっ!」

軽く口約束をして、校舎周りを散歩することに。学校いっぱいに溢れる人々の群から、少し離れた方へと歩き出した。(人が多くて、ちょっと疲れたわ)

「わあ…!!」

校舎の裏を歩いていると、大きな桜の木が目前にそびえる。そよ風に誘われた花びらが空を舞い、景色を一層際だたせていた。

「きれい…」

しばらく眺めていると、花が舞う隙間から、学生服がちらりと見える。不思議に思った私は、木の裏側へと回り込んだ。

「…っ!」

思わず私は、呼吸をするのを忘れた。花が舞う木の下で、とっても綺麗な男の子が寝息を立てていたのだ。(か、かっこいい…)

「………、」

長い睫を伏せた彼に、そっと近づく。そのとき、ぱちりと男の子は目を覚ました。

「う、ひゃあっ!」

情けない声を上げて後退すると、男の子は目を擦りながら私を見つめる。

「ん…、誰だ?」

「や、わ、わた…しは…っ」

挙動不審な行動に、彼は「?」をいっぱい浮かべながら、寝ている間に乗った花びらをパタパタと落とす。

「あ…、もう解散していいのか?」

「か、帰った人もいるから、もう大丈夫だと思い、ます…!」

「なんで敬語なんだよ。俺も一年、藤。お前は?」

「はは、花巻っ」

「そっか、じゃあな花巻」

背を向けて、ひらひらと手を振りながら、藤くんは行ってしまった。

「〜っ!!」

声にならない叫びをあげながら、私はその場にしゃがみこむ。一目惚れなんて、なんてベタなんだろう。

春の桜舞う入学式、これが私と藤くんの出会いでした。


:: 風が吹き花は舞う

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