「ううううー…!!」

自宅にて、わたしはグチャグチャに絡まる毛糸と奮闘しています。いまどこまで行ったっけ…!?

「お前に編み物なんて無謀だって」

部屋を通り過ぎた兄の一言。そう、わたしはふ、藤…藤くんのマフラー作りに励んでいるのです。編んでる途中に、恥ずかしくなってきて編み目を見失うという繰り返し。間違えたら編み直しの作業に、早くも挫けそう。

でも、がんばるんだ。藤くんのために。そんな一心で、気づいたら深夜三時までマフラー作りをしていました。


◆◆


決戦の日、二学期の終業式。冬休みに入る前に、渡そうと思ってこの日。わたしは震える足を必死に動かし、マフラーの入った袋をしっかりと握る。藤くんが保健室に入ったときに渡そう。そこなら女の子も来ないし…でも先生に見られたら恥ずかしいな。終業式が終わると、藤くんはまっすぐに保健室へ向かったようだった。わたしはその後ろを隠れながらついていき、ついには保健室の前。

よ、よし…!!

ドアに手をかけ、ゆっくりと開ける。そこには、お茶を飲んでいる先生と藤くんが。わたしはマフラーを後ろ手に、もじもじと入室する。

「ああ、花巻さん。来てくれたの?」

「あ、は、はい…っ」

ど、どうしよう。やっぱり先生の前じゃ渡せないよ…!自分でも怪しいと思いながら、足を動かせずに入り口の前で突っ立っていた。すると先生が、わたしが持っているものに気づいたようで、優しく笑う。

「ちょっと、僕トイレに行ってくるね」

すれ違いざまに、先生から、がんばって、と言われた。先生、ありがとう…!わたしはゆっくりと歩を進め、藤くんの前まで来る。

「花巻も茶飲むか?」

「あ、あの、藤くん。これ、よ、よ、良ければ…!」

「ん?」

藤くんは不思議そうに、袋を受け取る。

「マ、マフラー…。へたくそだから、す、捨てても…!!」

顔が熱い。藤くんはいつもの調子で、サンキュー、と言いながら、袋を開いた。

「うまく出来てんじゃねえか」

「あっ、ありがとう…!良かったあ…」

そう言って安心して笑うと、藤くんの顔が赤くなる。

「お前、笑ったらすげぇ……い、いや、なんでもない」

「?」

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