「ひゃっ」

ばさり、と響く音。感じた鈍い痛みと、床から伝わる冷たい温度で、また自分が転んだんだということに気が付いた。目前には移動教室のために持っていた、理科の教科書やらファイルやらが散らばっている。

「あわわわ…」

慌てて拾い集めると、今度はファイルからプリントが雪崩出てしまった。もう半分涙目になりながら、手をしゃかしゃかと動かしていると、すっと拾われた一枚のプリント。

「花巻って本当にどんくさいな」

「ふっ、藤くん!?」

みるみるうちに顔が赤くなっていく私を気にせず、藤くんは散らばるプリントを一枚一枚拾い上げていく。

「ほら、さっさと拾わねえと授業間に合わないぜ」

「はっ、はいい!」

今日の日記もきっと、あなたのことばかりになるんだろうな。私はチラリと藤くんの様子を伺って、そんなことをぼんやりと考えていた。


:: あなたを綴る

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -