ごめんね



本当、そんなことをしてしまってるなんて、気づかなくて。オレはみんなに笑っててほしくて。ただ、それだけだったんだ。

「いい加減にしてよ…!」「ボロボロになっていく逸人を見る私の身にもなりなさいよ」「見てるだけで、何もできないことが、どれだけ!」

鈍は自分が涙を流して怒っていることに気がついてないと思う。オレは、激情に呑まれている鈍をただ呆然と眺めていた。ほほを伝う滴、開閉する小さな口。それらを、オレの目はひどくゆっくりに捉えていた。ぽろり、ぽろり。涙はどんどん保健室の白い床を濡らしていく。何かをしなければ、と思っても何が最善なのかよく分からなくて、分からないまま鈍を自分の腕の中に閉じ込めた。

「離してよ バカ」

そう言いながら、鈍は抵抗せずにすっぽりと納まっている。それに、ぐすぐすと、次第に涙も引いていったようだ。

全く、お互い昔から素直じゃないね。

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