扉の前に札がかけてある。どうやら保健医は不在のようだ。
どうすっかなぁ、と俺は考えた。こうして札がかけてある時は扉も開かないのだ。案の定鍵が閉まっていた。
するとその時、盛大なあくびが頭上から聞こえた。もしかしなくてもギャモンだった。

「ギャモン!」

「あ?うお、何やってんだお前」

意識を取り戻したギャモンは俺に担がれているという不思議な状態に驚いているようだった。ギャモンは俺から離れきょろきょろと辺りを見回した。…あんだけ重かったっていうのに、何だか名残惜しい気がしてたのは気のせいだと思うことにする。
俺は少しためらったが他に説明のしようがないので先ほどあった出来事を話した。

「はあ?じゃああの本投げてきたのてめぇかよ」

「いや投げてねぇよ!重かったからちょっとフラついちまったんだよ…」

「だっせーなお前」

「なっ!!」

さっきからぶつけたであろう後頭部を無意識のうちにさすりながら喋るギャモンに罪悪感が湧いてどうにも言い返せない。まあ、悪いのは俺だしな、どう考えても。
歯切れの悪い俺を見てギャモンが一度口をつぐんだ。それから少ししてまた話始める。

「そういやお前、その本はどうしたよ」

そこで俺は気付いた。

「やっべ、忘れてた!」

すっかり頭から抜け落ちていた、本たちは散乱したまま廊下に放置してある。
慌てて俺は廊下を戻ろうとする。

「ほんとだっせーな、バカイト」

するとギャモンが俺と並んで歩き始めた。え、と俺は驚いて奴を見上げた。意地の悪い笑みがこちらを見ていた。

「弱っちいバカイト1人じゃ運べねぇだろ?」

「お前……大丈夫かよ」

「非力なてめぇとは違って俺様は丈夫にできてんだよ」

「いって!!」

せっかく心配してやったというのにどうやらそんな必要はなかったみたいだ。ギャモンが俺の後ろ髪を引っ張った。がくんと首が後ろに倒れる。


「何すんだよアホギャモン!」

「うっせぇ、てめぇが階段から突き落としたんだろ」

「お前、それを言うか!」

「事実だろばーか」

「そ、そんなつもりなかったんだよ!」

「あーあー、頭いてぇなー、どうしてだろうなー」

「この野郎……!」

どうやらしばらくはこのネタでギャモンにからかわれそうだ。





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