「もちろん、僕のおごりだよ」

そう言うとギャモンくんは驚いたように目を見張った。どうやら本当に冗談だったみたいで僕におごらせるつもりなどなかったようだ。

「え、まじすか」

「うん、まじすか」

「俺がどんだけ食うか知ってますよね?」

「そうだね、じゃあなるべく安いファミレスに入ろうか」

顔色一つ変えずに返す僕を見て本気なんだと分かったらしいギャモンくんは一度とてつもなく呆けた顔で僕を見上げた。
それからはっと気付いたように我に返って急に席を立った。顔がとても嬉しそうだ。

「じゃあ行きましょう!」

書類に向かっていた時はあれだけ元気がなさそうだったというのに。ギャモンくんの中で食というのはパズルに負けない程に大きな存在らしい。ここで僕が彼の中でどれくらいをしめているのかということは考えない。既に無機物に負けているという事実を目の当たりにはしたくない。

「え、書類は」

「もう終わりましたよ!」

腹へったー、とか言いながらギャモンくんが僕の手を取った。僕はその感触と光景に目を剥いた。早く行こうだなんてギャモンくんが僕の手を引っ張って走る。

「これが青き春と書いて青春というのだろうか…」

「は、なんか言いました?」

「大丈夫!一人言だよ」

まさかこんな形で手を繋ぐという恋愛イベントをクリアできるとは思っていなかった。
これが巷で言うツンデレというやつなのか。

「そうだ、バイクで行きましょう」

ギャモンくんはポケットからバイクのキーを取り出した。え、それって遠回しに俺の腰に抱き付けって言ってるの。やっぱりこれがツンデレだ、ああ、ツンデレ万歳。
この後バイクの上で僕がギャモンくんに思いきり殴られたのは言うまでもない。





続きは製品版で!