「ギャモン、実は…」

俺は本当のことを話した。
なんかもう、恥ずかしいっつーか、なんでこんなことになったんだとか、踊り場で何やってんだ俺たち、とかそんなことを漠然と思いながら口は勝手に事のあらましをたどたどしく吐き出していった。
ギャモンの奴はめちゃくちゃ眉に皺寄せて話を聞いていた、怒ってんのか、いやまあ怒るか、普通は。

「と、いうことなんだけど……」

「…………」

「…………」

すごくいたたまれない。
なんかとてつもなく微妙な顔した(あえて言うなら「え、ジャムマグロラーメン?それって合うの?食えるの?」って言い出しそうな顔してる)ギャモンに、何も言えない俺。これ以上何を言えっていうんだ、謝罪か。

「……な、なんだ、その」

頬の上のとこの筋肉が引きつる。慣れないことを言おうとしているからだ。

「……悪かった……」

よくよく考えてみれば、ギャモンは階段の上から落ちたんだ。打ち所が悪けりゃもっと最悪なことになってた。
どう考えてみても、こればかりは俺にしか非がない。

「……カイト」

ギャモンが動いた。声に反応して顔を上げると驚くほど目前にギャモンの手が迫っていた。頭を鷲掴みにされる。

「うわ」

「ばっか、何らしくねぇことしてんだ」

そのままぐりぐり押し付けるように髪をなで回された。ちょっと痛え。
視界を遮る前髪の隙間からちらりとギャモンの顔を覗いた。

「バカイトのくせに……気持ち悪ぃ」

なんかあいつ顔真っ赤なんですけど。
もしかして照れたのか、いやこの場面で照れっておかしくないか、とか考えたがなんかもうどうでもよかった。
てっきりまたいつもみたいにぎゃんぎゃんと喧嘩に流れていくと思っていた俺には予想外で、でもそれは嬉しい誤算というやつだった。

「おい、頭、大丈夫か」

「はぁ?」

「いや、大丈夫かっていうか…痛くねぇかよ」

俺はなんだか今日は上手くいきそうな気がすると思いながらギャモンの後頭部を撫でた。たんこぶできてるな。

「いてっ」

「あ、悪ぃ」

俺が触ったからかギャモンが声を上げた。
今度はそこに触れないようにそっと手を這わす。

「他はどっかぶつけてねぇか」

「お、おい……う、その……」

「あ、ここもか?」

「ば、ち、ち、ちか、近ぇ……!!」

いつもと少し違う雰囲気に呑まれてるのかギャモンはいつみたいに頭ごなしに怒らずむしろひどく狼狽えていた。

「ん、ここは…」

「だからっ、近ぇんだよばか!!」

そうこうしていたらついにギャモンがばしんと俺の頭を叩いた。

「てめぇ、いきなり、その…あー、なんだ、えっと」

どうやら言いたいことは山ほどあるらしいのだがありすぎて、そしてテンパりすぎて何も出てこないみたいだ。

「も、とはと言えば!ぜぜぜ全部お前のせいなんだからよ!……あー…………そうだ!責任とれ!!」

最終的に落ち着いた言葉がそれだった。
責任とれって、多分何か奢れとか、一日パシリやれとかそういうことを考えているんだろうか。
思わぬ方向に転んだなぁ、少しだけ重労働を押し付けてきた教師に感謝した。
さて、どうやって責任をとってやろうか。






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