うんうんとうなり声が聞こえてくる。ギャモンくんが書類と睨み合って頭を抱えている。そんな彼の姿をしばらく堪能してから僕は席を立った。
今、僕らは生徒会室で溜まった仕事を消化するのに奮闘していた。どうして役員でないギャモンくんと2人なのかというと、もともとはタマキくんにきつく言われて僕1人が残っていた。しかし偶然放課後まで残っていたギャモンくんを僕が半ば無理矢理引きずり込んだのだ。

「どうかした?」

ギャモンくんは僕から視線を逸らしてぼそぼそと呟いた。

「ここ、どー書くんすか」

まるで悪い点の答案用紙が見付かった子供みたいだなぁと思いながら僕は微笑んだ。

「ああ、これか」

サボり魔とはいえ仮にも生徒会長である僕は書類の整理や記入は慣れているから大抵のものはこなせるが、こういう仕事をしたことがなければたとえ頭が良くたって分からないことは色々とあるだろう。

「はい、こういう風にやってね」

ギャモンくんの目の前でやってみせるとどんどんギャモンくんの眉間に皺が寄っていく。それに耐えきれず僕はついに吹き出した。

「なっ、先輩!」

「いやあ、ごめんごめん。大丈夫だよ、こういう仕事に慣れてなきゃ分からないことだから」

謝りつつフォローの言葉を述べるとギャモンくんはどこか不服そうに僕を見上げた。彼は座ったままだし僕は彼の脇に立っているのだから、いつもと視線の上下が逆だ。

「なんか、先輩はすらすらやってんのによぉ……俺はやたらともたついてんのがなんか気に食わねぇ」

なんと言えば良いのやら、彼はこういうところでも負けず嫌いを発揮するらしい。出来なくて当然と言われても目の前でこなす僕を見てどうにも納得がいかないらしい。

「あはは、君らしいっていうか何ていうか……あ」

「え?どうしました?」

口を開いた時、ふと僕は気がついた。


何と言う?
「髪にごみついてるよ」
「これが終わったら何か食べに行こうか」