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※メイドギャモン。9話、パズル戦の後。





一騒動終えて僕が学園へ戻るとちょうど廊下を歩くギャモンくんを見付けた。赤髪のウィッグを左手で勢いよく振り回し、大柄なその身には少し不釣り合いな可愛らしいメイド服を着用して口笛なんか吹きながらこちらに向かって歩いてくる。よく見ればギャモンくんの顔にはどう見ても濃いメイクがほどこされておりそれがいかにも女装、という装いを引き立たせていて僕は思わず小さく笑った。
時計を見やるとなるほど彼がどうしてあんな姿でここを歩いているか納得がいった。学園祭のプログラムではそろそろミスルートボーイコンテストが終わる頃だ。そうか、彼はそれに出場していたのか。そこでそういえばカイトくんもお姫さまの格好をしていたなぁと思い出してなんとなくギャモンくんがこの大会に出場した経緯を察した。
ギャモンくんはまだ僕の存在に気付いていないようだった。普通に声をかけようと思ったのだけれど一歩踏み出して僕は不意に思い立った。
僕は方向転換をすると何も知らずに歩いてくるギャモンくんを待つために廊下の曲がり角に身を潜めた。こうすると何だかいたずらを仕掛ける小学生にでもなったようで妙に楽しくなってくる。まあいたずらするのは間違いないんだけどね。壁にぴったりはりついていると相変わらずの様子でこちらを素通りしていくギャモンくんの横顔が見えたので、それと同時に僕は彼の右手を掴んで引き寄せた。

「わ、ぎゃ、ちょっとぉ…!?」

いきなりのことにうろたえる彼をそのまま構わず腕を引っ張りすぐ近くの男子トイレに引き込んだ。勢いよく引っ張ったもんだからウィッグが廊下に落ちてしまったけどまあそんなことはどうでもいいや。
手を離してあげるとギャモンくんは驚いた顔で僕の方を見ていた。

「…軸川先輩じゃないすか」

「やあ、ギャモンくん」

僕が微笑むと彼は驚いた顔のまま「あ、どうも」と返してきた。どうにも状況が呑めていない様子でひたすら僕の方を見つめていた。
僕はギャモンくんより幾分か背が低かった。だから当然だけど僕は彼を見上げるし彼は僕を見下げた。普段から目付きがよろしくない彼はそうするとなかなか迫力があるのだけれど、今の格好と顔のメイクのおかげでそうじっくりと見つめられるとどうしても噴出しないわけにはいかなかった。

「え、なに笑ってんすか」

訳が分からないといったふうにギャモンくんが尋ねた。だから僕は2人のちょうど向かって右横、加えて言うなら僕らは向かい合ってるからギャモンくんから見ると左横にある洗面台を指した。

「面白いことになってるね」

「え?あー…」

指されるがままにギャモンくんがそちらを向いた。そうして鏡に映った自分を見てようやく合点がいったように声を漏らした。それからふと思い付いたように笑って僕を振り返った。

「どうすか先輩?なかなかイカしてんだろ」

「っ、………」

「…え?え、軸川先輩?」

「…君はもう、なんていうか…なかなかの強者だねぇ…」

「……はい?」

いかにもどこそこのオカマバーから来ましたという姿で自信満々にイカしてるだなんて言われたら笑わないわけがない。僕は思わず声にだして笑いそうになってしまったのだがなんとか口元を押さえてそれを耐えた。それでも笑いをこらえながら言葉を絞り出すと彼はどこか腑に落ちない様子で短く応えた。
突然、ギャモンくんが声をあげた。

「丁度いいや」

そう言って彼は洗面の蛇口を捻った。何をするのかと思ったら彼は両手で水をすくって豪快に顔を洗い始めた。それを3回ほど繰り返してから彼は顔を自身の腕で乱暴に拭いつつこちらを向いた。

「いや、なんつーか。化粧ってけっこう窮屈で」

ギャモンくんの頬を水滴が伝って顎から床へ落ちていく。化粧まみれの下から男らしくなかなか端正な顔つきが現れたと僕は知らず微笑む。やはり彼はこちらのほうがいい。心底そう思った。だがそこで気づいた、油分を多く含んだ紅が彼の唇に残り存在を主張しているのを。

「あ、やべ。まだ残って…」

「ちょっと待って」

ギャモンくん自身も気づいたのであろう、手で拭おうと上げた腕を僕はすかさず掴んだ。え、と驚いてこちらを見る彼の顎をもう片方の手で捕らえなかば無理やり僕の方へと引き寄せる。
自然、近付いてくる彼の唇に僕も自分の唇を近付けた。
ぴったりと重ねられたそれが震える。僕は彼の顎から手を離し代わりにそれを彼の後頭部へ回した。合わさった唇が離れぬようやんわりと彼を押さえ付けた。
ギャモンくんはぶるぶると身体を震わせていた。彼の片腕は僕が掴んでいるけど反対側は自由だ。だからその腕を彼はふらふらとさまよわせる。そして僕の肩を押すように掴んだのだけれどその手には全く力が入っていなかった。
じっくりと彼の反応と、そして何より柔らかい唇の感触を十分に味わってから僕は彼を解放する。恐る恐る目を開ける彼と目が合ったのでふんわりと微笑んでやると彼は面白いくらいに赤面した。

「……………」

「ん?どうしたの?」

「…う、ぐ…この…!」

どうやら混乱してしまって自分の感情を言葉に出来ないらしい。ギャモンくんは僕を指差しながらう、だのこの、だのと短い言葉を並べている。そんな彼にたまらず僕は手を伸ばす。触れた先は彼の赤く染まった頬で、そこは暖かくて滑らかで。指をすべらすだけで赤みを増す、何とも愛らしいところであった。

「君って、」

「…え?」

「とんでもなく可愛いね」

「ぎい、ぐうう…なんで、んな意味わかんねぇこと…」

「ね、ギャモンくん」

僕はありのままに今のギャモンくんを形容してみたのだけれど、どうやら彼はそれが気に食わない…というよりも全くもって理解不能のようでまた言葉にならない単語を発したりしていた。と、今度はそれから子供が言い訳をするような、そんなちょっとすねた表情で僕に問おうと口を開く。が、僕はそれを遮った。
ギャモンくんの肩を押す。すると僕の身体の重みも手伝って彼の身体は揺らいで後方へ倒れかかっていく。黒地に白のレースのスカートの中へ手を差し入れ引き締まった臀部を撫で上げそこからゆっくりと腿までをなぞっていく。ひい、だなんて色気のない声が聞こえてきて、でも何故かそれが逆に僕の欲を沸き上がらせた。

「僕と、いいことしてくれる?」

そして僕は返事も聞かず彼の口を塞いだのだ。












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続……かないw

机漁ってたら出てきました。おそらくファイブレの処女作であろうものです、今も酷いが前も酷い文の書き方するな私は。
似合わない女装って最高だと思います。
僕といいことしてくれる?ってソウジくんにしか許されないような酷い台詞ですね。

タイトル→M(メイド)G(ギャモン)M(萌え)
マジで浮かばなかったから英語にしたらそれっぽくなった。詐欺だと思った。