ピノギャ3連発



1つめ。
パーフェクトボーイ title by 惑星

彼は完璧、まさにパーフェクト。
外側から内側にかけて、全てにおいて完璧だ。美しく咲く薔薇のように紅い髪。硬いダイヤのような意志の強い瞳。しなやかに伸びる手足に、漆黒のライダースが彼の白い肌を一層際立たせる。
派手な見た目とは裏腹に、彼の作るパズルの綿密さといったらない。細やかで清廉、それに加えソルヴァーとしての才能もある。家事も出来て妹想いのお兄ちゃん。
完璧、完璧、そう、完璧、だ。

「ふっ……ふふふふふ」

今まで集めたデータの詰まった用紙の束が部屋の中を舞う。
ピノクルは薄暗い室内で1人笑みを溢していた。堪えても堪えても、喉の奥からくつくつと笑みが洩れていく。
彼のことを考えるだけでこうも心が踊る。何故か。それは彼が完璧だからだ。

「……いいねぇ、完璧って」

完璧。素敵な言葉だ。欠点がまるでない、完全なる壁。攻め入る隙がない。
だがそれ故に完璧は孤高で気高く、強き自尊心を持っている。それを思うとピノクルの喉が上下した。ごくり、と欲望を露にした音が鳴る。
散らばったデータの中に彼の写真を見つけてピノクルはふとそれを手に取った。
小さな平面の中でも彼は確かな存在感を放っている。写真の中の射抜くような視線がピノクルではない何かを見ていた。
徐にピノクルは写真の端を柔く食んだ。

「完璧って、壊したくなるよね」

そのまま力を入れて引っ張れば、嫌な音を立てて写真は裂かれていく。その音がピノクルにとっては心地好く聞こえ音色を味わうように目を細めた。
あの瞳を、あのプライドを。気丈夫であろうとする彼を手折ることができたらどれだけ気持ちが良いだろう。どれだけ興奮するだろう。

「もうすぐ行くから、待っててね」

写真は2つに裂けた。
先にばらまいたデータで白に埋め尽くされた部屋に鮮やかな破片が彩を添える。

「逆之上、ギャモンくん?」

一歩踏み出せば、足元でぐしゃりと破壊の音がした。




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なんていうかこのピノクル気持ち悪すぎた。
でもピノクルさんこういうの好きそう。ねちっこく相手を追い詰めて内側からぼろぼろに壊してくのとか好きそう。完璧よりもどこか欠けてる方が美しいんだよとか言ってその理想を一方的に押し付けたりとか好きそう。なんだそれ最低じゃねぇか。
これを拍手文にしようとしていたというまさかの事態。誰得なんだこれは。
でもこういう始まり方とか……好きなんだ……!






2つめ。


「ねぇギャモンくーん」

「うるせぇ寄るな触んな話し掛けんな!」

「もう、つれないねぇ」

飄々、という言葉がつくづく似合う男ピノクルは調子の良い笑みを貼り付けてギャモンの周りにまとわりついていた。そんな風にしつこくされて、ギャモンはどうにかピノクルと距離を取ろうと歩調を速めたり悪態をついたりしているのだがそれは無駄な行為だった。

「少しくらい相手してくれたっていいのに」

「てめぇなんかに割いてやる時間なんて一秒もねぇ」

「ふーん」

2人は早足で歩きながら言葉を交わす。ピノクルはギャモンの歩調に合わせているだけなのだが。

「じゃあ、一瞬でいいや」

「え?」

涼しい顔でギャモンの後を追い掛けるピノクルが突如駆け出してギャモンの正面に回り込んだ。
ふ、と笑みを深めると驚いているギャモンの顔へ自分の唇を寄せた。
それは、確かに一瞬だった。

「奪っちゃったー」

心底楽しそうにピノクルが言った。ギャモンは今までの間に何が起きたのか理解できなかった。

「ごちそうさまでした。って、あら?ギャモンくぅん?」

ギャモンは固まったまま動かない。不思議そうにピノクルが彼の顔を覗き込む。2人の顔が再度接近してそこでやっとギャモンは我に返った。思い切りピノクルの頭を叩く。

「あいた!!」

「てんめぇ……ふざけんなよ……!!」

「わお、真っ赤。かーわいい」

「うるせぇ!てめぇだけは……ぶん殴る!!」

「もう殴ったよね」

「黙ってろ!」

ピノクルの突然の行動に照れてしまったのか本当にぶち切れてしまったのか、顔はおろか首の方まで真っ赤にしてギャモンが拳を振り上げた。分かりやすい攻撃を難なくかわしてピノクルは走り出した。すかさずギャモンも追ってくる。

「わ、相手してくれるの?嬉しいねぇ」

「待ちやがれ!」

「せっかくギャモンくんが遊んでくれるんだもん。もっと楽しまなきゃあ」

「……捕まえたらただじゃおかねぇ…!!」

こうして2人の鬼ごっこが始まる。
ピノクルがギャモンを追いかけていた最初の立場とはまるで逆になっていることに、ギャモンはまだ気付いていない。




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完全なる突発文。
ピノクルさんはギャモンみたいな人を自分のペースに乗せるのとか上手そう。
つーかギャモンがピノクルさんみたいなのに乗せられそう、だってなんかねちっこい感じの攻め方の人とかギャモン苦手そうなんだもの。あれ、でもソウジとかもねちっこそうwwwww







3つめ。


ピノクルはギャモンの前に立ちはだかると不敵な笑みを浮かべた。

「君のことは、ようく知ってるよ」

彼の得意分野は情報収集。そんなことはギャモンの方も分かっていた。だから興味を持ったのだろう、眉を潜めてきつくピノクルを睨んだ。言ってみろ、とでも言いたげに。
ピノクルの方も言ってやるさ、というように目を細める。しかし彼がこれから言うのは本当の情報などではない、嘘だ。彼の様子を伺うための、嘘を吐くのだ。嘘の情報についての返答を見て心理を見抜く、これも大事な情報収集だ。

「逆之上ギャモンは、俺のことが好き」

自信を隠さぬ調子でピノクルが言うとギャモンははっと目を見開いた。驚いたのだろう。
さて、どう答える。
実際、ギャモンが誰を好きかなど知る由もなかった。だから別に誰でも良かったのだが、自分にしたのは少々痛い奴だったか。

「…………あ、れ?」

しかしピノクルはギャモンのまさかの返答に思わず口をぽかんと開けてしまった。首を傾げる。
どういう答えなのだ、何とも言えぬ表情で頬を赤く染めているなんて。
この男なら普通は必要以上に怒って違うに決まってんだろ、だとかそういうことを言うのだと思っていたのに。そのあとに、じゃあ誰々さん?だとか然り気無く聞き出そうとか考えていたというのに。
初なギャモンの反応が気恥ずかしくなってきてピノクルも戸惑う。

「……も、もしかして……図星?」

「…………え」

小さく呟いたピノクルの言葉にギャモンは反応した。どうやら嵌められたことに気付いたらしく顔を赤くしたままもう勘弁してくれよとでもいうような表情を浮かべた。
いつになく弱々しいギャモンの表情に、ピノクルも思わずどきりとして頬を熱くした。
嵌められたなんざ、とギャモン。
不意打ちなんて、とピノクル。
そして2人は思った。
一生の不覚だ。と。




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こういう恋の始まりっていいよね。他の誰でもなく私が萌えます。
つかなんでギャモンはピノクルを好きになったのかが謎過ぎてやばい。ギャモンはかっぱ寿司が好きすぎて河童系には目がないって設定にしておこう、よしそうしよう。つかそんなお馬鹿なギャモンとピノクルでなんか書きたい、なあピノクル一緒に河童捕まえに沼行こうぜ、みたいな……毎週日曜は2人で沼デートwwwwww


あまり深く考えずに↑の書いてたけどピノギャって需要はあるんだろうか。書くのはなかなか楽しかった。