一つ屋根の下!


※パロ要素超強め
※都合によりギャモンは社会人で一戸建てに一人暮らし
※ギャモン以外は人間じゃない





仕事を終えて我が家へと帰宅。その疲れた俺を癒してくれるのが、毎日俺の帰りを健気に待ち続けてくれている可愛い家族たちだ。
今日も家に着いて早々に俺が帰ってきたことを察して庭から一匹の犬が走ってきた。俺の周りをくるりと回ってから太股の辺りに頭を押し付けてくる。

「おう、ただいまダウト」

これはこいつなりの甘え方で俺はしゃがみこんでダウトの首周りの毛をわしゃわしゃと掻き回した。こいつの犬種はコリーだから首周りの毛が長くて触ると気持ちがいい。
ダウトは元は保健所にいた。保護されていたところを俺が引き取ったのだ。いや、だって……あのまま放っておいたらそのうち殺されちまうなんて聞いたら動物好きの俺はどうしても無視できなかったのだ。

「留守番ご苦労」

俺がそう言って撫でるとダウトがわんと一声鳴いた。

『当然だ、この家とギャモンを守るのが私の仕事だ!』

褒められて嬉しいんだろうかと思いつつ背中を一頻り撫でてから俺は立ち上がった。

「もう少ししたら餌やるからな、それまで待ってろよ」

そして俺が玄関扉を開けようとするとダウトは名残惜しそうにしながらも素直に庭へと戻っていく。
ダウトは賢い。俺の言葉が分かっているみたいだ、それにしっかり番犬してくれるしなつくと可愛いもんだし。元は保健所にいただなんて思えない。

「ただいま」

靴を脱いで家へ上がるとバサバサと忙しない音が聞こえてきた。思わず笑みが溢れた。それからしばらくして、

「ギャモンちゃん、ギャモンちゃん」

と声が聞こえてきた。セキセイインコのダイスマンはいつもこうして俺を出迎えてくれる。リビングから顔を出したダイスマンは俺を見つけるとまたギャモンちゃんギャモンちゃんと言いながら俺目掛けて飛んできた。

「おかえり、ギャモンちゃん、おかえり」

「ただいま」

「ただいま!」

「それは俺の台詞だぞ」

「ただいま!ギャモンちゃん、大好き!」

「はっ、ほんと相変わらずだよな」

ダイスマンはとにかくよく喋るしよく鳴く。こうやって人間の言葉を覚えて俺の前で喋ったりするが他の動物たちに向けてもよくぴーぴー鳴いて何やら会話しているようだった。
ダイスマンは俺の肩に乗ると自分の羽根をつつき始めた。ちなみにこいつもダウト同様、出会いはペットショップなんかじゃなかった。仕事帰りにたまたま寄ったコンビニの前をちょこちょこと歩いていたのを俺が見付けた。どうにも様子が変だと思っていたらやはりそいつは片方の羽根を怪我していたようで飛べずにいたのだ。前の飼い主に捨てられたのかもしくは逃げ出したのか。そうなるとまた動物好きの性というやつで、そんなのを放っておく訳がない。そんなこんなで今はすっかり怪我も治りいつしか我が家にすっかり馴染んでいた。

「どら猫に襲われなかったか?」

といたずらにそう問うてやると言葉を理解したのかどうか分からないがダイスマンがいきなりぴー、と鳴き出した。

『そうなんだよギャモンちゃん!今日もあの食い意地張った黒猫が窓の向こうから僕のこと涎垂らしながら見てた!』

「なんだー?分かったんなら喋ってみろ」

「ギャモンちゃん!大好き!大好き!」

「…そればっかだよなお前」

意味が分かって喋っているかどうかなんてことはギャモンには分からないことだ。
ダイスマンを肩に乗せたままリビングへ入っていくと真っ先に革張りのソファの上に茶色く丸まった毛玉のようなものに目がいく。

「あいつまた寝てんのか」

呆れて俺が呟くとダイスマンが鳴きながらその毛玉の方へ飛んでいく。

『ほらー、ギャモンちゃん帰ってきたよ!』

ソファの背もたれに止まりぴろろ、とダイスマンが騒ぎ立てると不意に毛玉が動き始めた。ぼて、とソファから転げ落ちてころころと俺の足元まで転がってきた。俺はそいつを抱き上げた。

「やっと目ぇ覚めたか、ソウジ」

『ギャモンくんおかえりー』

ソウジはホーランドロップという耳が垂れている種類のうさぎで、俺の家族たちの中で唯一のペットショップ出身だ。だからかもしれないがこいつはダウトやダイスマンよりもマイペースで呑気だ。根っからの温室育ちで産まれてこのかた危険な目なんかに遭ったりしていないからなのだろう。

『ギャモンくん僕ね、お腹空いたー』

ソウジが鼻をひくひく動かした。

「なんだぁ腹減ってんのか?」

『うん、ご飯まだかな?』

この仕草はソウジが腹を空かせた時のお決まりの行動だから俺もすぐに察しがついた。
だから俺はソウジをソファに下ろして冷蔵庫へと向かった。

「ちょっと待ってろ、りんご切ってやる」

『僕りんご大好きー』

ソウジの好物であるりんごを冷蔵庫から取りだし細かく切る。ダイスマンとダウトの分も用意してやる。作業している間ソウジはずっと俺の足元にまとわりついてまた毛玉のように丸まっていた。
ちょうど全て切り終えて皿を出している時、不意に外の方が騒がしいことに気が付いた。犬の鳴き声、ダウトのだ。
あまり普段から激しく吠えたりしないダウトがこれだけけたたましく鳴いているのは珍しかったため俺は不思議に思ってリビングにある庭へ通ずる窓を開けた。

「おい、ダウトどうし……っ!!!?」

次の瞬間、俺は目を見開いた。黒い物体が宙を舞い俺の目の前に迫ったのだ。そのまま逃げる間もなくそれは俺の顔にべったりと張り付いた。
足元でダウトが吠えている、それと遅れてダイスマンが驚いたのか忙しなく鳴き始めた。

『ギャモンから降りろこの目障りな猫が!!』

『うわあああなんで家の中に入れちゃうのさ!僕食べられちゃうよ!ダウト早くどっかやって!!』

『そんなことは分かっている!』

騒がしい鳴き声を聞きながら俺は怒りに震える手で黒い物体をばりっとひっぺがした。

「まーたお前かぁ、バカイト!!」

ぶらんと首根っこを掴まれている黒い物体、というか黒猫はカイト。俺の『お隣さん』である井藤さんが飼っている猫だ。カイトはよく家にちょっかいを掛けにやってくる。家に猫はいないから、カイトがこうしてやってくることは最初は嫌ではなかったしむしろ大歓迎だった。のだが。この黒猫は色々と問題があった。ここに来る度に何故か大暴れして帰っていくのだ。井藤さんの話によれば、普段はごろごろしていて活発に動いたりなんかしないと言っていたというのに。もしや俺の家でストレス発散でもしているのだろうか。俺の何が気に入らないんだ、嫌がらせとしか思えない。

『よーお、アホギャモン。今日も遊びに来てやったぜ』

カイトは俺の手から逃れると憎たらしいくらい優雅に床へ着地した。

「あっ、こらカイト!!」

『お、美味そうな鳥がいる』

カイトに目を付けられてダイスマンが物凄い勢いで自分の鳥籠の中へ逃げ込む。

『きゃーーー!!ダウト、早くどっかやって!ほんとに食われちゃう!!』

『このどら猫…!!』

ダウトが唸りを上げてカイトへ向かっていく。俺の家の奴らの中でもこいつらは一番仲が悪い、やっぱ犬と猫だからか。

『へっ、間抜けな番犬くんに俺が捕まるかよ!』

『…その減らず口が叩けるのも今のうちだ!』

「お、おいダウト!!」

カイトが軽やかにソファや棚の上へ飛び移りそれをダウトが追いかける。飛んだり何だりが得意なカイトはともかく、図体もでかいダウトが部屋中跳ね回ったら大変なことになる。

『いっつも尻尾振ってギャモンの後ばっか追っかけてる奴には負けねぇよ』

『何だと?貴様こそこの家の者ではないくせにギャモンにちょっかいばかり…!』

『もしかして妬いてんのかよ。俺、お前よりギャモンに可愛がってもらえてるから』

『どこがだ!うっとうしがられてるのが分からないのか?』

『はぁ?そりゃお前だ、無駄にでかい図体しやがって!』

「…お前ら……」

わんわん、にゃーにゃー。うるさいったらありゃしない。

『大体、お前がここに来ること自体ギャモンに迷惑がかかってるんだ!』

『それはお前が騒ぐからだ!!』

どんどんダウトとカイトの喧嘩は激しさを増していく。それに加えて今まで大人しくしていたダイスマンまでもが鳴き始めた。

『ちょっとちょっとぉ!ギャモンちゃんギャモンちゃんって言ってるけどさぁ、ギャモンちゃんにいっちばん愛されてんのは僕、』

『鳥は黙ってろ鳥は!食うぞ!!』

『きゃーー!!ギャモンちゃん助けてぇ!!』

「お前らいい加減にしやがれ!!」

どれだけ待っていてもこの騒ぎは収まりそうもなく、ついに俺は大声を上げた。一斉に奴らは動きを止めてはっとしたように俺の方を見つめた。

「ダウト!家の中で暴れるなっていっつも言ってんじゃねぇか!!」

俺が叱るとダウトはしゅんと尻尾を垂らし不服そうに伏せをした。こいつは叱られて不貞腐れるといつもこうなる。

「お前は、こっち」

少し重いがダウトを抱き上げた。ベランダから庭へ降ろす。

『ギャモン!私は……!』

「問答無用だ!」

『はっ、怒られてやんの』

一言鳴いてベランダでしゃがみこむ俺の背に得意気に飛び乗るカイトの首根っこを掴む。

「お前も帰れバカイト!!」

『うわっ!!』

カイトを庭へ放り投げてすぐさま窓を閉めた。カーテンも閉めた。しばらく2匹の切なそうな鳴き声が聞こえていたがここは心を鬼にする。奴らにはいい薬だ。

「ギャモンちゃん!ギャモンちゃん!」

「……お前も、あんまり騒いだりすんなよ?」

まあ今日はあの2匹のせいだから怒ったりしないけどな。こいつも天敵である猫が怖かったんだろうから鳴くのも無理ないか、とダイスマンの小さな頭を指で撫でてやった。
一段落したとため息をつきながらソファに腰掛けた。

「…………ん?」

すると横から変な音がしていることに気が付いた。何だ、表すんならしゃりしゃり、というようなそんな音だ。

「……げ」

そして横を見やって俺は顔を歪めた。

「ソウジ……お前、それいつの間に」

そういえば先の騒動でもソウジは大人しかったなと思っていたら。
そうか、ソウジはずっとこのソファの上で騒ぎなどもろともせず俺が切っておいたりんごを一心不乱に頬張り続けていたのか。
にしても台所にあったりんごをどうやってソウジが取ったのだろうか、それは謎だ。
ソウジが口の中をもごもごとさせながら俺の膝の上へのぼってきた。

『ねぇ、ギャモンくん』

俺が何気無くソウジの垂れた耳を弄っているとソウジが顔を上げた。見ると鼻がひくついていて俺は思わず笑いを溢すしかなかった。

『晩ごはんはまだ?』

「お前、どんだけ腹減ってんだよ」

どれだけ家の中が賑やかになってもこいつは変わらないな。

「ま、あいつも反省しただろうし。飯にすっか」

ベランダの方はもうすっかり静かだ。
ぽんぽんとソウジの背を叩くと奴はころんと転がって俺の上から退いた。
いつの間にか仕事の疲れはこいつらのおかげで吹っ飛んでいた。
一つ屋根の下、今日も我が家の家族は賑やかで、平和だ。








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なんていうか、楽しかったです。こういうの一回やってみたかった。
逆之上家の家族たちは意外にはまってると思うんですよね、特にダイスマンの煩さはwwwww
ダウトさん最初は絶対ドーベルマンかシェパードだろjkとか思ってたんですけどあの人の服とか髪の毛とか案外もふっててそう思ったらコリーになってた。番犬に最適な犬種だね!ダウトさんは超忠実な番犬だよ!詳しい設定はリアタイのネタカテゴリの方にあるのでよろしかったらどうぞ。
なんていうかこの話はギャモン総愛されでもありますがギャモンがみんなのこと愛してます、奴はただの動物馬鹿です。あとギャモン受けではなく愛されです、ここ大事。

つーかこれはwww驚くほど需要がなさそうで怖いくらいですwwwww