明星 title by 惑星 頬を挟んで口づけるとギャモンくんは潤んだ目をさ迷わせてからゆっくりと目を閉じた。 「閉じないで」 僕は言った。すると大げさに肩を震わせて彼は窺うように瞼を持ち上げていく。大きな瞳が露になるとそれがきっ、と僕を睨み付けた。きらきらと涙の膜で輝く瞳は美しかった。 …彼はなんというか美しかった。熟れたような愛らしい朱をたたえた髪に始まり、文句のつけようのないしなやかに伸びる腕や脚。意外に白い肌。全て。彼の全てが僕の感情を揺さぶり掻き乱す。中でもこの輝く瞳は格別だ。 僕と彼の愛の証、とでも言えば格好がいいかもしれない。好意的な感情をあまり表にあらわさない彼の分かりやすい変化。僕が精一杯に愛しそして愛でてやると応えてくれる彼なりの返事。 「…せんぱい、…」 苦しそうな声。きっと限界なんだろう。息も何も全てを絡めとるような口づけは一層彼の瞳を輝かせた。だから僕は彼が限界なのも承知で口内をあそぶのだ。もっと見ていたい。彼の持つ明星。愛の証。光に反射すると切なく煌めくその瞳を。 「…なんていうか…」 切なさが眩しい。一瞬大きく煌めいた瞳に自然と言葉が漏れていく。 「好きだ」 唇が離れる短い合間に言葉を紡ぐ。 君は、と問うてからまた優しく唇を寄せる。 「…言わなくても、分かるだろ…」 彼の愛に言葉はない。ただその瞳が揺らぎ輝く時だけが、僕が彼の愛を疑い無く感じられる唯一の時。 この美しい光が二度と失われぬように。 そう思うと、この触れあう唇を離すことはできなかった。 過去拍手 2012/02/29〜2012/03/29 |