POG下っ端×ダイスマン


あの。そう声を掛けられる。ふとダイスマンは周りを見回した後に背後を振り返る。

「もしかして、俺?」

「……はい」

ダイスマンは自分を指さしながらそう問うと、彼の前に立つ青年は首を縦に振った。見覚えのある顔だ、ダイスマンは青年の顔を見て思った。POGに所属する人間は莫大な数であり、その中でも階級が上のものは極少数で大多数は下っ端ばかりだ。青年が着ている制服はその大多数のものである証拠だ。
だが普段あまり下の階級と関わりを持たないダイスマンだが何故かこの青年には見覚えがあった。

「…なぁ、あんた…どっかで会ったことあった?」

ダイスマンが疑問を素直にぶつけると、その瞬間に青年の顔がぱっと明るく綻んだ。

「あっ、お、覚えていてくださったんですか、俺のことっ」

「へっ?いやぁ、残念ながら…。ただなんか見覚えあったかなー、なんて…」

「いいんです!それでも、俺、おれ、嬉しいですからっ」

見るからに大人しめな印象を受ける青年は顔を真っ赤に染めてダイスマンの手を取った。ダイスマンの方はそんな青年の行動に戸惑うもののなんとか苦笑いで返した。妙にどもるのは彼の癖だろうか。

「あの、あの!俺…あなたの、為に…頑張ってパズル、作れるようになりますっ…!」

「…え、俺のため?」

青年の長めの前髪から覗く瞳は真っ直ぐにダイスマンを捉えていた。それと同じく真っ直ぐな彼の言葉にダイスマンは気圧されるように一歩後退する。

「俺…まだ、新人で…ここでやってけるか、ふ、不安で…。そんな時に、あなたが、その…お、俺に声、掛けてくれてっ…」

その青年の話にふと引っ掛かるものを感じた。やはりどこかで会っている、この青年と。もやもやとした映像が脳内を旋回している。記憶の鍵はもう喉元までせりあがってきている。ああ、もどかしい。

「………あ」

「え?」

「思い出した」

だが唐突に記憶が甦ってくる。いかにも暗そうなな新人。新人が集められたホールの隅で今にも死にそうなくらいに縮こまって震えていた1人の…。

「ああ、あん時のか」

「え、え、あの、」

「思い出した、あん時の新人かよ」

青年の前髪が揺れる。嬉しそうに細められた目がよく見えた。

「あ、お、思い出して、くれたんですか…!?」

「ああ。あー、そうそう。そういや、手、離してくれないか?」

「っ!!す、すすすみませんっ!」

そういえば先程からずっと手を握られたままだった。それに気付いたダイスマンが言うと青年はこれでもかというくらいに驚いて手を離した途端に謝りだした。

「いーよいーよ、俺サービス精神旺盛だから」

「あ、す、すみません」

「んで?何か俺に、用でもあった?」

謝るのが趣味なのか。ひたすら謝る青年にダイスマンは言葉には出さないが密かに思った。とりあえず先を促す。

「……い、いえ、実は…。用事は何もないのですが…」

ないのかよ。おどおどしている青年を前にダイスマンは内心ため息をつく。

「で、でも…どうしても言いたいことが、あって…」

「何だ、用あんじゃん」

今度は思わず声が出た。

「…へ!?」

「いや、続けて?」

ダイスマンの呟きをどうやら怒っていると解釈したのだろうか、青年が肩を震わせてダイスマンの表情を伺った。それに片手を上げて何でもないと彼はやんわりと否定した。青年がおずおずと口を開く。

「………俺の、パズル…解いて、ください」

そこから飛び出したのは意外な言葉だった。

「…………え?」

ダイスマンは見開き小さく声を漏らす。だがそれを気にせず、というよりも熱が入り周りが見えなくなってきた青年はダイスマンの反応すら見えなくなり夢中で言葉を吐き出し始めたのだ。

「声を掛けてもらった時、俺、ほんとに不安で、怖くて。でも、あなたが…俺に言ってくれてっ、もっと気楽にやれって、力抜けってっ。それで、何かのために、やれって…目標持ってやれば…不安になってる暇なんて、なくなるからって…」

ダイスマンは彼の話を聞いている内に段々と罪悪感が募ってきた。何故なら青年の言うダイスマンの発言は、全て記憶にないからだ。
青年のことは確かに思い出した。ああ思い出したとも。しかしまさか彼にそんな言葉を吐いていただなんて。

(俺って思ってもないことぺらぺら喋っちゃうからなぁ…)

参ったな、とダイスマンは青年から視線を逸らした。

「だから、俺、決めてたんです…」

「…へ、へぇ?何を?」

「あなたのために、って」

「………………はぁ!?」

そういえば、あなたのため、と最初にも言っていたが。あれが用だったのか。そしてもしかするともしかするのか、彼が見出だした目標というのがダイスマン自身ということなのだろうか。

「あなたに、俺のパズル、解いて欲しいんですっ…!」

またこの真っ直ぐな目。逸らすのが躊躇われるような純粋な目。ダイスマンは思わずたじろいだ。

(……それにしてもコイツはPOGの目的分かってんのか。)

青年の発言からすればダイスマンは確かに目標を持てと言ったのだろうが、まさかそれが個人的な感情に向くとは思わなかった。POGに入ってきたのだからそれは自ずとそちらの方へ向かっていくと。もしくは自分自身が抱く欲望などの方か。
ダイスマンはしばし考えた。しかしあまり面倒ごとを好まない彼はすぐに考えることを放棄する。平たく言えば、別にどうでも良かった、である。別にダイスマンを目標として設定したとしても、それが彼の意欲を増幅させ結果的にPOGの利益に繋がる。それならば、別にどうあってもいいか、と彼は楽観的に思った。

「ふぅん、あっそ。でも俺、ギヴァーだよ?」

「え、………あっ!」

ダイスマンの発言の後、ぽかんと口を開けた青年が弾かれたように声をあげた。

「あっははは!いーよいーよ!解いたげるさ、もしもあんたの満足いくパズルが出来たらなぁ!」

「………はい!」

満面の笑みを浮かべて返事をする青年に釣られてくすりとダイスマンも笑みを溢す。

「ただし」

「…え…?」

「…俺のハートに一発、ビビビっとくるヤツ。頼むぜ?」

ちょっとだけ格好つけて片目をつむって指先で青年の胸をとん、と突いてやる。ちょっと決めすぎたか、なんて思うがすぐにまあいいやと思い直した。
ぼーっとダイスマンの一連の行動を見つめ続けていた青年の顔がみるみる内に赤くなる。もともと赤かったというのに、これではもう病気なんじゃないかというくらいに。その変化にダイスマンが驚いていると我に返った青年が勢いよく彼に抱き付いてきた。

「わっ、ちょ、ちょ…おい!?」

「俺…頑張りますっ!」

ダイスマンの胸に押し付けていた顔を上げて屈託のない笑顔を見せる青年に、押し退けようと伸ばした手が止まる。

(サービス精神旺盛だとは言ったけどなぁ…)

まあ、たまには構わないか。
ダイスマンは笑って両手を軽くあげた。いわゆる降参のポーズ。
…これから騒がしくなりそうだ。

青年の好意が尊敬の念ではないものだと彼が気付くのは少し先のことである。







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需要なさすぎモブ×ダイwwww
実はまだネタがあるwwwwww
一発書きだから文章大変なことになってますが許してください。終わりかたやべぇwwwww
こう…ヘタレわんこみたいな攻めいいですよね、このネタの青年はなつくとわんこっぽくなりますという設定です(笑
あとヘタレっつうよりヒッキーみたいな口調してるなwwwどんだけコミュニケーション能力ねぇのwwww
結果…青年の属性:ヒッキーわんこもどき攻め
ちなみに青年はダイスマンのキザな行動にいちいち格好いい!可愛い!とかって思ってます、純粋なんです。

ほんとはもういっこのネタと一緒にアップしようかと思いましたが案外長かったしこれ書いてとりあえず力尽きたので一つずつにします。

にしても需要がねぇwwwwww