スタマイ*短編 | ナノ

【7:00】 with SomaKujo

「珍しいな、あなたがここに居るなんて。何をしているんだ?」
私がキッチンで今日のケーキ用のクリームを泡立てていると、壮馬さんが不思議そうな顔で入口からこちらを見ていた。
「バレンタインですので、チョコレートケーキを」
「ほう。…それは夕食のときに食べられるのか?」
「はい。愛情込めて作りますので、今日はお早いお帰りをお待ちしてますね」
彼の問いにそう答えると、彼はキッチンの中に入ってきて私の隣に立ち、私の手元のボウルを見る。
「味見をしてもいいだろうか?」
「え!?…いいですけど、ちょっと待ってくださいね。今スプーンを…あ」
顔を上げて振り向こうとした瞬間、頬に柔らかいものが当たる。横目でそちらを見ると、壮馬さんの唇が私の頬に触れているのがわかって、急に心臓が騒がしく音を立てる。
「あ、の、壮馬さんっ」
「フフフ…気付いてないようだったので、つい悪戯をしたくなってしまった」
さっき腕を上げた時だろうか、ほっぺたにクリームが着いていたようで、彼にキスと一緒に舐め取られてしまった。
「あなたの愛が込められているからだろうか、とても甘い味がする」
「お口に合ったのなら、それは良かったです」
微笑みながら私を見つめる彼に、私も嬉しくて見つめ返す。すると彼は私の名前を呼び、私の肩にそっと手をかけて、顔をゆっくりと近づけて目を閉じた。私もそれに合わせて目を閉じ、顔を少しだけ上に向く。
(壮馬さん…大好き)
唇が重なろうとした瞬間、私の後方でガタガタと何かが音を立てる。振り返ると、チョコレートを溶かすために沸かしていたお鍋が沸騰して揺れていた。
「あ!」
慌ててお鍋の火を止めて、安堵の溜め息つく。私のその様子に「気をつけるように」と彼から優しく注意を受ける。返事をして時計を見ると、そろそろ家を出る時間だった。
「ふむ、実に残念ではあるが、時間がきてしまったから仕方ない。続きは今夜、俺の寝室で」
「もう、壮馬さんったら」
愛の戯れをする予告されると恥ずかしくて顔が火照る。恥ずかしがる私を見て、壮馬さんはまた微笑んでいた。
「楽しみにしている。ケーキも、その後も」
彼はそう言い残し、 私が「いってらっしゃい」と声をかけると軽く手を上げてキッチンを出ていった。お鍋が沸いたからか、私は少しだけ温まったキッチンで、愛する人のために一生懸命ケーキ作りに励むのだった。


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