スタマイ*短編 | ナノ

今大路峻『イルミネーションが輝く夜に』

カスレ様 リクエスト夢
夢主視点 年上恋人 切甘→微裏
■リクエスト内容■
お相手キャラ:スタマイのカナメくんor今大路さん
夢主設定:年上
夢内容:夢主がやきもちを妬いてしまい喧嘩になってしまうが最後は甘く少し裏要素も含んで仲直り!
視点:おまかせします。
夢傾向:切甘裏

*****************************
腕を引っ張られて連れてこられたのは、馴染みのある彼の部屋のベッドの上だった。
「なに!?やだっ…やめてよ」
コートすら脱いでいない状態にも関わらず、彼は私を押し倒し、私の足の間に入ってそのまま足を持ち上げるように抑えつけてくる。抵抗しようと手を伸ばすけれど、届かず上手く躱されてタイツを乱暴に剥ぎ取られた。
「…少し、強引な方がお好きかと思いましたので」
「え?…あ、ちょ…やぁ」
また嘘の顔で笑う彼は、下着越しに割れ目に指をねじ込ませるようにグッとなぞる。まだ濡れていないソコは、指を押し付けられてじんわりと湿り気を増していく。意識したことはなかったけれど、どうやら私は彼に少し強引にされるのが好きなのかもしれない。そんなことをぼんやりと考えて、小さく溜め息をついた。
(どうして、こんなことに)
指はそのままに私に覆い被さる彼を見つめる。気のせいでないのなら、なんとなく彼は怒っている。けれど、頬が少し赤くて照れているような、そんな表情を見せた。



寒空の下、この日のために街は何週間か前から煌びやかに輝き出す。場所によっては、そこら一体が全部そのキラキラしたもので飾られて、カップルはそれを見にその場所へ訪れるのだ。
無論、私も今日は彼とそれを見に行く予定。
(やっぱり、来ないじゃん)
待ち合わせの駅前で待つこと1時間、彼はやはり姿を現さない。それもそのはず、だってさっき私は見てしまったのだから、彼の浮気現場を。
(さっきの女の子、可愛かったなぁ。いくつだろ)
おそらく私より若い女の子。峻とカフェから出てきて、お店の前に停めていたバイクの後ろに彼女を乗せていた。二人ともスーツだったから、仕事帰り、寧ろ職場の同僚とかだと安易に考えてしまう。
(連絡もきてないか…)
遅くなっても連絡が入ることは、あんまりない。けれど、1時間も遅刻、しかも誰かと一緒に用事があるとなれば流石に連絡はしてくる。それでも連絡がないのは、きっと後ろめたい事情、もしくは私との約束を忘れているかのどちらかで、私は、前者なのではないかと疑った。だって、今日はクリスマスだから、流石に忘れるなんてありえない。
(峻のバカ…)
時計を見ると、また20分も経っていた。寒空の下、一人溜め息を吐くと白い息が出てくる。彼と手を繋ぐつもりでいたから手袋を持ってこなかったのが原因で、指先が悴んできた。
「帰ろ…」
何の予告もなく、こんな事になったのが悔しかった。彼があの席に別の人を乗せるっていうのは、そういうことだと思わざるを得ない。言いたいことが色々湧き上がってきて、今すぐ電話してやりたいけど、今頃、彼女とバイクで何処かに向かっていると思うと気が引けた。電話をかけて、楽しそうに笑い合う声を聞きたくない。だから、帰ろうと思ったその時、
「ねぇ君、ずっと一人でいるけどどうしたの?」
知らない若い男が声をかけてきた。驚いて顔を上げると、顔立ちの整ったイケメンが二人、私を挟むように立っている。思わずガン見するけれど、すぐに峻の顔が頭に浮かんできて、改めて峻の顔面が最高に好きだなと思った。
「クリスマスに一人でいるの寂しくない?俺たちと遊ぼうよ」
明らかにナンパ目的の台詞に失笑する。本来なら、落ち込んで泣きそうな状態の私は、気持ちが揺らいでこんなアホみたいなナンパに流されてしまうところだが、どうしてか段々と怒りが湧いてきた。
「退いてください」
「えーどこ行くの?俺たちと遊ぼうよ」
逃げようと一歩足を踏み出したが、二人が近寄ってきて邪魔をする。ここはいっそ大声をあげて助けを求めようと口を開いたその時、
「すみません、お待たせしましたナマエさん」
後方から知っている声が聞こえた。けれど私は湧き上がってきた感情を抑えることができずに男たちを掻き分けて走り出した。
「私は今、超絶落ち込んで感傷に浸ってるところなの!邪魔しないで!」
明らかに後方から聞こえた声は峻の声だった。あの他人行儀な敬語、あれは外で振る舞うときに使う彼の嘘の顔。二人きりの時はもっと偉そうで傲慢で、すぐ意地悪してくるドSで、照れてぶっきらぼうな態度でしか本音は口にできなくて、それでいて、簡単に私を抱きしめたりする。
(なんで)
男たちのことはどうでもいい。ただ、峻が今更現れた事実に嬉しくて、怒っていた感情が混乱し始めたから、私は咄嗟に走り出してしまった。だって、彼から真実を聞きたくない、そう思ったから。
(なんで、来ちゃったの?さっきの女の子と一緒に過ごすんじゃないの?)
寒空の下、私は逃げるようにキラキラとした街を走る。彼のためにオシャレして、慣れないヒールの高い靴を履いて。
「きゃぁ…あっ!」
そのせいか、私は足がもつれて細いヒールをタイル溝に引っ掛けて躓いた。と思った。
「あっ…ぶねっ!お前、なに逃げてんだよ」
その途端知ってる香りに包まれる。そう、そうやって言葉とは裏腹に、彼は私を簡単に抱きしめるんだ。
「……」
ゆっくりと体勢を立て直させられ、彼は無言で俯く私の正面に回った。嬉しい気持ちと怖い気持ちが入り交じって、何を言えばいいかわからず、顔も見ることができない。何か言わなきゃと口を開くけど、何も出てこない。頭に浮かぶのは疑問の言葉ばかりで、ここで選択を間違えると私たちの関係が壊れるのではないかと怖かった。なんで、彼はここにいるのだろうか。どんな気持ちで今、彼はここに来たんだろう。
「なんだよ、怒ってんのかよ?」
「……」
「なんか言えよ」
さっきまで言いたいことがいっぱいあったはずだけど、私から言い出すのもなんとなく嫌で、黙ったまま彼を見つめることしかできなかった。少しの間、沈黙が続く中、彼の気持ちが知りたい、その想いばかりが募って唇をキュッと結んだその時、彼が溜め息をついて口を開いた。
「はぁ…悪かった。連絡寄越さなくて。急に残業になってそれで」
「違う。謝ってほしいわけじゃなくて…」
「は?」
彼が、他の人を選ぶなら仕方がないと理解はしていた。けれど、どうしてちゃんと言ってくれないのか、どうして残業だなんて嘘をつくのか、口に出して終わらせたくないと思ってしまう。
「なんだよ」
「……」
「はぁ…。黙っていては何もわかりませんよ、ナマエさん」
ここで黙っていても何も解決しない、彼の言葉を聞いてもう一度さっきの女の子を思い浮かべる。たくさん嫌な気持ちが湧き上がってきて、それ自体も嫌だと思うけれど、私は漸く本心を述べることにした。
「バイク、さっき女の子乗せてた」
彼は私の言ったことに一瞬驚いた様子を見せたけれど、すぐに私を馬鹿にしたように苦笑いを浮かべる。
「あーなるほどな。お前、なんか勘違いしてんだろ」
「勘違いじゃないよ。バイクの後ろに乗せてたでしょ」
彼のそれに対して、私は本気で落ち込んで怒って口から責め立てる言葉が出てくる。責めたいわけじゃないのに。
「乗せてたけど、それがなんだよ」
「……」
(あの席は、特別な人しか乗せないって言ってたのに)
私自身もあまり乗せてもらったことがないあのバイクの席に、さっきの女の子は慣れた様子で乗っていた。その事実が何かを表しているようで、羨ましくて、腹が立ってしまう。
「ヤキモチですか?」
何も言わない私を見て、彼はまた少し笑ってあの敬語で聞いてくる。その態度が、より私に不信感を抱かせていることに彼は気がついていないのだろうか。
「峻も私みたいなおばさんより、若い娘の方がいいんだなぁって思っただけ」
私は彼の態度に余計に腹が立って、拗ねたように言い放った。そしてこの場から逃げたくて、くるりと駅の方へ翻し歩き始めた。
「おい、どこ行くんだよ」
「帰る!」
走ると転ぶから、少し早足で歩く。早くしないと怒りで泣いてしまいそうで、本当に居てもたってもいられない。
(ああ…今日クリスマスじゃん)
街はどんどんカップルや家族が、人が増えてきていて、キラキラと輝く街灯やイルミネーションと共に賑やかになっていく。子供のはしゃぐ声や見つめ合うカップルの温かい雰囲気に、羨ましさが私の中に溢れていって、嫌な気持ちに覆われた。
(もう、なんでこうなっちゃうかな)
目に溜まった涙が落ちそうになって足を止めようとしたとき、誰かがギュッと私の手を掴んだ。それは、振り返らなくてもわかる彼の手でしかなく、どうしてか少しだけ安心してしまった。
「ちょっと離してよ」
本心とは裏腹に今更引き下がれずに抵抗する。すると余計に力を込めて握られ、隣に並ばれた。
「うるせ、いいから来い」
彼は繋いだ私の手を引っ張って駅に向かう。無言のまま無理のないスピードで歩いて辿り着いたのは、バイクの停めてある駐輪場で、彼は自分のバイクの所まで私を導いた。
「乗れよ」
彼は当たり前のようにヘルメットを押し付け、受け取らざるを得なくなる。一度…いや二度くらいだけ身に付けたことのあるそれを、今は被る気持ちになれなくてただ見つめた。
「…なんで?」
「なんでじゃねぇよ、帰るんだろ」
ヘルメットを被せられ、綺麗に盛った髪が崩れる。そして、特別な人しか乗せないこのバイクの後ろ、特等席に通された。



「ん…峻…」
”強引に”と言った割に彼の手付きはとても優しいものだった。「目閉じろよ」と言われて素直に閉じると柔らかいものが私の唇を愛撫する。それと同時にゆっくりとコートや上着を脱がされて、オフショルダーのワンピースはブラと共に下にずらされた。
「誰をバイクに乗せたって俺の勝手だろ」
視線を時折逸らして私の胸をやんわり解すように揉んでいく。その手付きはいつもより優しくて、急にどうしたのか気になってしまう。
「ぁ…特別な人しか…んぁ…乗せないって」
胸の突起を親指と人差し指で摘まれながら、胸にキスをされて声が漏れる。最初は何をされるのかと思って抵抗の意を示していた手も、既に力が抜けて布団の上に置いていた。
「あいつは仕事内で特別な女だから、護衛しなきゃいけない」
「仕事で…。でも、プライベートを犠牲にしてまで」
「いいだろ、別に。…こうやって抱きたいと思うのはお前だけなんだから」
彼の言葉を聞いて、さっきまでのモヤモヤしたものが嬉しい気持ちで覆われる。それと同時に、なんだか自分がくだらないことで怒っていたのが可笑しくて「ふふっ」と声に出して笑った。
「…何笑ってんだよ」
体を起こして服を脱ぐ彼が聞いてくる。今さっき言ったことが恥ずかしいのか、彼の顔は若干赤く染まっているように見えた。
「峻…顔、赤いよ」
「うるせ。こっち見んな。いいから、…抱かせろ」
下着姿の彼が私を見下ろして口説いてくる。不器用で正直すぎる口説き文句に私は両腕を伸ばして、覆いかぶさってくる彼の背中に腕を回した。深く噛み付くようなキスから伝わる彼の気持ちに、私は目を閉じて答え続ける。
(これ、特等席かも)
こうやって、貪りたいと思うのも私だけって思ってもいいのだろうか。バイクの後ろは特別な人じゃないと乗せない、私は特別な人になれているのだろうかと、考えながら口を動かした。
「はぁ…くだんねぇことでヤキモチとか…ん…焼いてんじゃねぇよ、バーカ」
時折唇を離して呼吸を整える。キスをしながら文句を言われるのは初めてだけれど、でもそれでいいと思えた。
別にバイクの後ろに乗れなくてもいいじゃないか。
彼が私を特別な女性として愛してくれているのなら。
バイクの後ろに乗れなくても、イルミネーションが見れなくても、彼はこうやって私を愛してくれている。
(あぁ、なんかダメかも)
彼はまた私の大事な部分にグッと指を押し込んで触れる。急な衝撃に、目を閉じた私の頭の中ではキラキラとイルミネーションが輝き出すのだ。
「ねぇ…峻、やっぱりイルミネーション見たいな」
不意打ちの質問に彼は一瞬驚いた態度で私を見つめてくる。
「起きて、クリスマスが終わってなければな。ま、確率は低いけど」
「OK。じゃあクリスマスが終わる前に…」
そのまま、首筋に唇を寄せた彼の耳元に「たくさん抱いてね」と小さく囁いた。
暖房も入れてない少し冷えた薄暗い部屋に二人の吐息が響く。予定とは大分違うけれど、私たちは嘘のない愛を贈り合うクリスマスの夜を過ごすのだった。



[ back ]


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -