スタマイ*短編 | ナノ

神楽亜貴『ボディチェック』前編

1年以上交際している 体の関係はあり
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唐突に呼び出されて来てみれば、やはり着せ替え人形のように彼の作る新作サンプルを着ては脱いでの繰り返し。
今回はなんと…

「ねぇ、水着着たことないの?なんでそんな小さい布の着方がわからないわけ?」

彼は試着室からなかなか出てこない私に文句を言う。そんなことを言われても、こんなに布面積の小さな水着なんて着たことがない。だって上も下も大事な部分を隠すので精一杯っていうか、隠れてない気がする。
(もう、なんでこんな際どいデザイン作ってるのよ)
決して私は、乳輪が大きい方ではない。多分。平均的だと思うのだけれど、それでもこの小さな三角の中には収まらないようで、写真を撮ったらモザイクがかかる状況だ。
「ねぇ、いい加減にして。恥ずかしいのはわかってるから、さっさと出てきてくれないと仕事進まないんだけど」
これが人にものを頼む態度だろうか。いや、この人の場合考えるだけ無駄なんだけれども。デザイナーってみんなこうなのだろうか。
仕方なく恥を偲んで試着室から出る。とりあえず、この布は小さすぎるとクレームを言おうと思い、あえてモデルっぽいポーズで彼の前に立った。
「手は横。背筋伸ばして胸張って、真っ直ぐ立って」
すぐさま手を掴まれ、姿勢を整えられる。私の勇気は無駄に終わった。
彼は私の周りをゆっくり一周し、両手で私が着ている 水着のブラ紐を結び直し整える。少しくすぐったくて身をよじると「動かないで」と怒られた。不思議なもので、彼が整えると布の中に綺麗に乳首と乳輪が収まる。私が何度も位置を直しても、左右で上手くバランスがとれず、どちらかがポロリしていたのに。水着の着付けもできるのかと感動する。
「うーん、危ういな。これ自分で着れないでしょ?」
「え、あ、はい。ポロリしちゃう」
それだけ聞くと、彼はデスクに戻りデザイン画と私を見比べ、悩んだ表情で私を、正確には私が着ている水着を見てくる。数分、いやもう10分くらい経っただろうか。そんなに見つめられていると恥ずかしさもなくなってくる。私は突っ立っていることに飽きてしまい、彼の近くに寄った。彼のデザインのお手伝いができないかと、デザイン画を覗き込むと、胸が下がって水着がズレた。これがよく言うポロリというやつである。
「何してんの?」
あまりにベタすぎたせいか、彼は若干笑って馬鹿にしたように言う。私は慌ててこぼれた胸を両腕で隠してみるが、彼の手によってそれは防がれた。
「隠さないで見せてよ」
「ちょっと…何急に恥ずかしい」
(何?どこでスイッチ入ったのこの人!?)
慌てる私をよそに、彼は私の腕をまた横につかせ、姿勢を整えるように背中に手をあててくる。胸を張るように促され、また一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。
(何このプレイ!?なんで私、おっぱい丸出しでこんな姿勢!?)
彼は椅子に座ったまま、私の胸をまじまじと見つめる。その光景を見ているのが辛くて、私は目を瞑って恥ずかしさに耐えていた。すると、突然右の乳首に何かが触れる感触がして、私は思わず声をあげる。しかし、特に摘まれるとかぐりぐりされる様子はなく、本当に何かが一瞬触れた程度で終了した。今度は左の胸に移動し、同じような感触が。一体何をされているのか気になり、私は恐る恐る目を開けた。
「え!?何してんの!?」
「見ればわかるでしょ。サイズ測ってんの。動かないで」
(サイズって…乳首の?乳輪の?)
そんなところ測られたことがあるわけがなく、身を引こうと震えてしまう。メジャーを持った彼の指が若干私の乳首をかすり、くすぐったくて息がもれる。
「3.6センチ」
「ちょっと言わないで」
「別に平均的じゃない?これで作り直すから、それもう脱いでかして」
彼は縦横と私の乳輪をしっかり測定し、用済みと言わんばかりに突き放される。水着のブラだけ外してデスクに置き、恥ずかしいから両腕でまた胸を覆った。
「平均的って、そんなにたくさん測ったことあるの?」
「数字なんてネットで調べれば出てくるでしょ。実物で確認しておきたかったから君を呼んだ」
(そうだよね。さすがにモデルの子の測ったりできないよね)
デザインに書き込み作業をする彼は、こちらを見向きもしないが、私を不安にさせないようにちゃんと答えてくれる。実物を見て触るのは恋人の私だけ、そう言われると少し嬉しいと感じる。
「次、下見るからそこに座って足開いて」
彼がそう言って指差すのはベッドで、これはもうやばいと危機感を感じて反論を試みる。
「いやぁ、別に足開かなくてもいいんじゃ」
「開脚しても大事な部分が見えないかの確認だから必要事項なの。恥ずかしいのはわかってるから、さっさとして」
私は仕方なく、腕で胸を抑えながらベッドに座った。ゆっくり恐る恐る足を開いていると、焦れったいのか彼は私の目の前に膝をつき、私の膝を掴んで思い切り足を開いた。そして、股間をまじまじと見られる。
「ちょっと亜貴。恥ずかしいからやめ」
「黙って」
こんなしっかりと電気のついた部屋で、股間を見つめられる。あまりの恥ずかしさに講義の言葉を述べても、彼は真剣に仕事をしているだけだった。この少しハイレグ気味の水着パンツは、後ろがTバック、前がV字のデザインになっていて、前もギリギリな状態である。
(そんなに開いたら、またポロリするじゃん)
私が心の中で耐えていると、何を思ったのか彼は、またメジャーを取り出し、私の股の割れ目に沿ってあてて計測し始めた。また縦横とパンツラインに沿って測っていき、指でなぞられる。別にいかがわしい事をしているわけではないのに、見られて触られると、そういうことをしている時と変わらない気分になってくる。私は耐えられずに小さく声をあげ、体をビクリと震わせた。それを見ていた彼は、怪訝そうな顔をする。特に何も言われなかったが、お仕事中の彼にとって私の反応は耳障りだっただろう。申し訳ない気持ちもあるが、正直もうこの羞恥から解放してほしかった。もしくは…
(今日は…エッチしないのかな…?)
「ねぇ」
そんなやましい事を考えていると亜貴に鋭い口調で声をかけられる。やっぱり怒っているのだろうか、ちょっと怖い雰囲気を放っていた。
「もう足閉じていいから、次四つん這いになって、こっちにお尻向けて」
立ち上がりながら彼にまたすごいことを言われ、涙が出そうになるのを堪えて、私は指示通りにベッドの上で四つん這いになった。さっきと違い、私からは彼が何をしてるかが見えないのが余計に私を緊張させ、興奮させる。
「もう少しお尻突き出して」
「え、何するの…?」
「いいから。他にもやりたいことあるから早くして」
鬼畜だ。私はまた恥を偲んでお尻を彼に突き出す。こんなの、彼とセックスするときにもしたことない体勢で、あれ、けっこうキツい。腰と膝にすごい負担かかる。
彼はそんな私を知ってか知らずか、お構い無しに先程同様にメジャーで計測を始める。今度は股からお尻の割れ目を通って肛門までの長さだろうか。メジャーが食い込むように大事な部分にあたって、また声が出そうになる。今度は唇を噛み締めてなんとか耐えた。
「はい終わり、おつかれ。そのパンツも脱いでかして」
計測は終了したようで、最後に軽くお尻をポンと叩かれた。私は言われた通り、水着パンツを脱いで彼に渡そうとしたが、とんでもないことに気付く。全裸だ。いや、そうじゃなくて、私はこのサンプルパンツを自分の蜜で汚してしまっていた。まずい、いくらサンプルとはいえ、製作中の水着。亜貴にバレたら殺される。
私はパンツを強く握りしめ、ベッドに座り直す。どっと疲れが襲いかかり、軽く賢者タイムに陥った。軽くため息をつくと、椅子に座っていた亜貴に怒った口調で話しかけられる。
「ねえ、さっきから気になってたんだけど、それは何?どういうつもりなの?」
「え…えええあ、なに??」
ついにバレたかと思い、慌ててパンツを後に隠し、半開きの足を閉じた。傍から見たら異様な光景だろう。全裸の女がパンツを隠し持っている。そして、それを指さす服を着た男。今誰かが部屋に入ってきたら溜まったもんじゃない。
「ん?今なんか隠した?」
「いいいやいやいや、何も。それで、どうしたの?」
「ああ、だからそれ。君のその…下の毛?どういうつもり?」
「…は?」
いきなり予想外な質問をされて、混乱する。下の毛とは、つまり陰毛のことだろうか。どういうつもりも何も、生えてるんだけれど、それに不満があるのか謎の質問を口にした彼。彼とはもう体の関係があるし、何度も見ているはず。今更何を言い出すのか不思議で理解できなかった。
「え、わからないの?もうすぐ夏だよね?なんでそんなボーボーに生やしてるの?ムダ毛処理とかしないの?」
「あ、ああ!そういうことぉ」
「そういうことぉ…じゃなくて、水着からはみ出てるとか有り得ないんだけど。僕言ったよね、今日ここ来る前にLIMEで”水着試着してもらうから準備して来て”って」
少し腹が立ったが、とても正論で何も言い返せなかった。水着と聞いて思いついたのは、ヘアゴムと浮き輪と夏っぽい鞄で、まさかムダ毛の指摘をされるとは。しかも陰毛。
(そんなこと言われたって、私はモデルでもなんでもないのに)
「今、”私はモデルじゃないもん”って思ったでしょ。そういうことじゃないから。女としても有り得ないから。今時、男だって手入れしてる人いるんだから、整えるくらいしてよね」
私の考えは彼にはお見通しなようで、もうどう足掻いても無駄だった。私は半ば諦めモードで立ち上がり、パンツを彼に渡す。彼は受け取って一瞬顔を歪めたが、何も言わずにブラと一緒にデスクに置いた。そして、何か考え込むように髪をかきあげ、椅子から立ち上がった。
「ちょうどいいから、僕がやってあげる」
唐突に放たれた彼の言葉の真意がわからず、キョトンとする。
そして、訳が分からないまま私は、バスルームに連れて行かれるのだった。


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