何でこんな事になってんのか分からない。頭がついてってねえ。 多分誰だってそうだろう。俺はさっきまで普通に授業を受けてたのに、気付けば学校の外、行き先の大して分からないバスに乗っている。 ああ、これどうすんだよマジで。部活始まる前に戻らないとまた真田副部長にガツンとやられる。 そんな事を思ってため息を吐いたら隣の女はコロコロと笑った。 「何がそんなおかしいんだよ。」 『だって、一緒に学校飛び出した癖に今更ため息なんて吐くから。 切原君ってかわいいなって思って。』 隣にいるのはクラスメイト。 笑うと最高にかわいい奴。でもって変な奴。 ついでに言うと俺の好きな女だ。 俺は確か昨日、この女に告白した。たまたま放課後二人っきりになったしチャンスだって思ったから。 したら、この女は昨日にっこりと最高にかわいい顔で微笑んだだけで何も言わなかった。いいも、悪いも言わなかった。 俺はそのまま妙な気持ちを引きずったまま部活に行って、いつものように過ごした。 今日、学校に来た時もいつも通りで。 何度もこいつが何を考えてんのかが気になって視線を送ったけど。 こいつはいつも通りだった。 だけど、いつも通りじゃなくなったのはほんの数十分前の休み時間。 『切原君、一緒に遠くに行こう。』そんな訳のわからない事を言って俺の袖を掴んだ。 それってサボるって事?どうすんだよ、なんて言った時俺は自分を心底まともだと思った。 そしたらこいつはただ笑って『どうする?』そう言っただけだった。 そこからは、こそこそと誰にも見つからないようにカバンはそのままで財布だけ持って学校を飛び出した。 いきなり手を繋いで来たから拒否する理由も無く俺はその手を握り返して今に至る。 「…で、どこ行くんだよ。」 『ドライブだよ。』 「ドライブってバスでする事だっけ。」 『だって車運転出来ないでしょ。』 まあ、そんな事を言って俺は黙り込んだ。 なんとも掴めない。こいつは何を思って俺の隣で嬉しそうににこにこ微笑んでんだか。 俺も何で制裁っつうリスクを背負って学校を飛び出したのか。 後者の理由は簡単だ、こいつが好きだから。 前者はさっぱりわからない。 ぼーっと窓の外を見ていると、トンネルを抜けて海が広がった。 海沿いを走ってんのか、このバス。 そんな事を思って景色を眺めていた。 そしてふと目線を隣に戻してみると、隣でさっきまで笑っていた女が泣いていた。 え、何で。 さっきまで笑ってたじゃん。 わっかんねえ、マジでわかんねえ。 俺何か言ったっけ? っつうか心当たりなんて無いのになんでこんな焦ってんだろ。 「ちょっと…何で泣いてんだよ。」 『あのさ、切原君は何で一緒に来てくれたの?』 「…お前が好きだから。昨日も言ったじゃん。」 『…本当だったんだ。』 「嘘で言ったって仕方ねえだろ。」 俺が困り果ててため息を吐いたら、いきなりふと泣きながら笑った。 『私が居なくなったら困ってくれる?』 「困るから、ここに居るんじゃん。」 『うん、』 「好きな奴が居なくなったら困る。」 『うん。』 「何があったのか知らねえけど、泣くなよ。」 俺がそう言って手を握ったらただ黙ってこいつは何度も頷いた。 俺はその時、心の底から思ったんだ。 なんつうか、こいつの涙ならアリだなって。 本当はびーびー泣く女は嫌いだけど。 こいつのはなんていうか、きれいにさえ見える。 あーあ、俺には脳みそが足りない。 いいわもう馬鹿で。 |